みりお

カラーパープルのみりおのレビュー・感想・評価

カラーパープル(1985年製作の映画)
3.9
スピルバーグの一大リベンジ作品とも言えるミュージカル版が気になっているので、予習鑑賞🎬

本作は、アフリカ系アメリカ人作家によるピューリッツァー賞受賞作である同名小説を、小説発表からわずか2年でスピルバーグが映画化した作品。
それまで『ジョーズ』『未知との遭遇』『インディ・ジョーンズ』『E.T.』などのエンタメ作品の制作に徹底したスピルバーグが、映画監督としての手腕を見せるべく、初めて撮った社会派作品だと言われている。
作品の評価は高く、第58回アカデミー賞で作品賞を含む10部門にノミネートされたが、一方でスピルバーグが賞狙いに走った姿勢や、「白人男性が黒人女性を描いたとて理解できない」との反感があり、無冠に終わったそう。

私は、その評価には納得がいかない。
(むしろ逆差別ではないか?)
白人男性だって、黒人差別に問題意識を抱き、真に黒人女性に寄り添う表現はできる。
加えて、オスカーとは作品そのものや、出演俳優たちの作品内での演技を評価するものであって、監督の他作品が純粋な評価の妨げになるべきではないはず。
エンタメ作品を撮っていたほうがスポンサーも付きやすいだろうに、その状況下で、それでも社会的テーマの中に描きたいポイントを見つけたスピルバーグは評価されるべきだし、スピルバーグの知名度のおかげでこの作品がいまも多くの人の目に触れていることは素晴らしいことだと思うな。

そして作品自体も、人間の醜く汚らしい部分もしっかりと描きつつ、観る人の心を追い込みすぎないコミカルな要素も加えられていて、絶妙なバランスで展開されていると感じた。
こういった差別や抑圧・暴力への対抗を描いた作品は、人生観を変えるのにとても重要だと思うけれど、ほとんどの作品が重すぎて、二回目の鑑賞をためらったり、知人に薦めにくい作品も多い。
けれどスピルバーグの絶妙なキャスティングによって、辛く苦しいテーマの中に、ファニーな皮肉や、各キャラクターたちの愛すべきポイントが見えたりして、要所要所で心が洗われる。
ダニー・グローヴァー演じる"ミスター"なんて最低な男だけど、ふと見せる表情はまるで子供のようで、憎みきれない。
そして映画初挑戦のウーピーが演じるセリーが、初めて口元を隠さずに大笑いできるようになる瞬間のあの笑顔!あれ観たさに、きっと私はまたこの作品を再生する時が来るはず。
そして抑圧と横暴の中でも、セリーの想いが我が子へと受け継がれている様子に、諦めずに明日を夢見ることの大切さを感じられる。
演技初挑戦の若い女優陣を見出し、表現力を高め、その能力を開花させた、この作品の作り手たちは、やはり全力で評価されるべきだと思う。

ただ唯一残念な点があるとすれば、ラスト10分程度に全ての展開を詰め込んでしまったこと。
広げた展開を急ぎ足で回収してしまった感が否めない。
セリーとネティが、数十年以上に渡って募らせたお互いへの想いがどう解き放たれるのか、そこはもう少し丁寧に回収してほしかったかなぁ。

さてさて、スピルバーグのほぼ40年ぶりのリベンジとも言えるリメイク版。
ミュージカル案件になってなおのこと興味マシマシ♡
延期に延期を重ねた夏休みをただいま堪能しているので、このあと鑑賞してまいります🥳


【ストーリー】

1909年、ジョージア州の小さな町で、まだ幼さの残る少女セリー(ウーピー・ゴールドバーグ)が父親からの暴力の末に子供を出産するも、不条理にも我が子と引き離されてしまう。
彼女にとっては、美しく賢い妹ネティ(アコーシア・ブシア)だけが心の支えだったが、嫁いだ先で夫からも暴力を受け、セリーはネティと引き離されてしまう。
奴隷のような扱いを受けるつらい日々を過ごすセリーだったが、夫が連れ帰った美しく溌剌とした歌手・シャグ(マーガレット・エイヴリー)との出会いなどを通し、徐々に生まれ変わっていく。


【キャスト・スタッフ】

*監督:スティーヴン・スピルバーグ
『宇宙戦争』でみりぺでぃあ記載済。

*セリー:ウーピー・ゴールドバーグ
『天使にラブソングを』でみりぺでぃあ記載済。

*ミスター:ダニー・グローヴァー
『ジュマンジ/ネクスト・レベル』でみりぺでぃあ記載済。

*シャグ:マーガレット・エイヴリー
アメリカ出身🇺🇸
舞台からキャリアをスタートさせ、1972年にスピルバーグ監督の『恐怖の館』で映画デビュー🌟
1973年にはミュージカル『Does a Tiger Wear a Necktie?』でいくつかの賞にもノミネートされています🏆
本作では第58回アカデミー賞のアカデミー助演女優賞にノミネートされています✨
みりお

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