ケリー・ライカート特集はこれで３作目
主人公ウェンディは愛犬ルーシーとともに車で寝泊まりをしてアラスカへ向かうのだが、その道中で足止めを食らった数日間の話
主人公がやることなすことうまく行かず、色々な社会の仕組みに行く手を阻まれて徐々に手詰まりになっていく感じがとてもリアル
ここで誰かに特段の悪意があるわけではないのが辛いですね スーパーの店員にしろ修理工にしろ、やることをやっているだけですし、つれない反応の姉夫婦だって別に悪気があるわけではないのでしょうし
こうしたシステムの動作の結果、主人公が最愛のパートナーたる愛犬すら手放さざるを得なくなる展開は見ていてやるせないところがあります
作中で優しさを見せてくれるのは警備員のお爺さんぐらいですが、それだけにこの人情味は格別なものに見えますね
それでも、最後の餞別として渡してくれたのは数ドルという雀の涙ほどのお金なのが物悲しい それまでの人物描写から考えると、きっとこれで本当に精一杯だったのでしょう（それにしても、車にいたケバい女性は何だったのだろう？）
あと、野山で寝ていた時にやってきた謎の男の独白が非常に印象に残りました なんとか精一杯やろうとしているのに社会から阻害されてしまったことに対する忸怩たる思いに胸が痛くなりました（まあ、やべえやつではあると思うのですが…）
このシーンでの主人公の心のざわめきを貨物列車の音とシンクロさせる音の使い方は非常に良かったです
全体的に主人公を演じるミシェル・ウィリアムズのボーイッシュな髪型と佇まいがとてもクールでした 演技もすごく自然で非常に良かったです
冒頭の犬と遊ぶところなど、見ていて惚れ惚れするような美しいシーンも他の監督作品と同様に多数見受けられました
他の作品もそうでしたが、見た後に自分の中で色々考えたくなる含蓄のある映画でした こういう映画はホント見た甲斐があっていいですね
