すずき

パリ、テキサスのすずきのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.5
テキサスの荒野で、行き倒れの男が保護された。
男は黙して語らず、何者か分からなかったが、持ち物から家族に連絡する事が出来た。
彼は妻と共に4年前に失踪したトラヴィスという名の男で、彼を引き取りに来たのは弟のウォルト。
ウォルトは、トラヴィスの幼い息子ハンターを引き取って、この4年間育ててきた。
失踪の理由を何も語ろうとしないトラヴィスだが、ただ一言「パリに行こう」とだけ話す…

ヴィム・ヴェンダース監督による、自分を許せずに罰を与え続ける男のお話。
前半はテキサスを舞台に、トラヴィスとウォルトのロードムービー風。
失踪した男に何があったのか、興味をそそられる導入部で掴みはバッチリ。
中盤はロサンゼルスのウォルト夫妻の元で、息子のハンターと親子の絆を再び取り戻すトラヴィスが描かれる。
そして後半はヒューストンで妻を探す、3章構成となっている。
それぞれのロケーションが、心象風景と重なり美しかった。

しかし、イイ話風に終わるけど、トラヴィスの行動はほとんど自己満足だけだ。
結局のところトラヴィスは、自分に罰を与える、という無益な事しか出来ずに、自分の責任を果たす事をしなかった。
トラヴィスの奥さんも同様で、そんな2人だから結婚・子育てなんて上手くいくハズもなかった。
2人ともそれを分かってるから、息子のハンターをほっぽり出して、帰る事はなかった。
彼らは悪人と言うより、不器用なんだろう。
どんなに愛し合っていたとしても、上手くいかない。哀しい事に、そういう人もいる。

ハンター君の事を考えると、そんな2人の元より、ウォルト夫妻の元で育てられる方が良さそうだ。
ラストではウォルト夫妻のその後は分からないが、あの後ハンター君を引き取りに来て欲しい。