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息もできないのdeenityのレビュー・感想・評価

息もできない(2008年製作の映画)
4.0
韓国映画らしい非常に暴力的な映画。痛々しい映像全開。侮辱ワード連発。気にしない人には気にならず楽しめる作品であるかもしれないが、受け入れられない人からすると拒絶されるかもしれない。ただ、見終わった後の暴力的なまでの余韻は誰もが共通して感じるはずである。

主役でありながら冒頭から明らかに嫌われるオーラ出しまくりのサンフン。そんなサンフンに唯一たてついた女子高生のヨニ。
平気で女子をぶん殴る辺りは衝撃だったが、この二人が少しずつ心を通わせていくのは不思議と見守りたくなる。
それは二人がどちらも似たような境遇の人生を辿ってきたからだ。今の自分に、自分の人生に違和感を感じているからだ。それなのに素直になれないからだ。
そういう二人だから、唯一の心の拠り所となっていく様がとても愛おしく感じる。

サンフンが作中で大きく感情を露わにするシーン。あんなに暴力的な奴にどうしてこんなにも感情移入してるんだ、ってくらいにグッと来る。唯一の弱さを見せ、そしてそれを受け入れる。素晴らしいシーン。

この広い世界で、この組み合わせしか噛み合わないだろうという二人。できることなら、という幸せを願った。しかし、そう思うように運ばせないのが人生の残酷さだ。因果応報とはこのことだ。不覚にも泣かされそうになった。

ただ、ラストの食事シーンを見ていると幸せな笑顔に溢れていて、この作品での唯一の救いのように思われた。サンフンもこれなら報われたんじゃないだろうか。

しかし、ここでもまだこの作品は終わらない。ヨニの過去のフラッシュバック。本当に人生は残酷だ。『息もできない』ほど、苦しい世界だ。
おいおい、最後の最後まで暴力的だな。思い切りボディーブローを喰らった気分だよ。
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