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栄光のル・マンのQTakaのレビュー・感想・評価

栄光のル・マン(1971年製作の映画)
4.0
オイルの焼ける匂い、タイヤの焦げた匂い。
時速300kmオーバーで繰り広げられるバトル。
この映像には、実際のル・マン中継を凌駕する表現が有る。
だって、これは映画なんだから。
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映像の撮り方は、制作当時ではかなり画期的なものだったのだろう。
なんせ、普通の撮影用カメラを、プロトタイプカーに直接マウントしちゃうんだからね。
マシンに、前後と側方に向けたカメラを設置しているから、レーシングスピードでの追い越しシーンをカット割しながら撮影出来るという、夢のようなシーンが繰り広げられてしまう工夫だ。
この撮影当時は、ユノディエールはシケインの無い、5Km以上のほぼ直線コースだった。
メインスタンド前から、ダンロップブリッジをくぐるS字コーナーを抜けて、テルトル・ルージュを右に曲がると延々と続くユノディエールだ。
ひたすら直線を、アクセルが床を抜けるほど踏みつけるのだろう。
いわゆる、「フラットアウト」ってヤツだ。
映画では、最後の最後のラストラップでこの直線でのバトルが見られる。
直線の終点は、右の直角コーナー、ミュルサンヌコーナーだ。
ここは、コース全体の折り返し地点でも有る。
メインスタンドのピットから一番離れている。
このミュルサンヌには、ピットから電話線が曳かれていて、ピットからの指示が伝えられ、ピットボードでドライバーに伝達されていた。
映画では、そのサインボードも出てくる。
そんな、ドライバーの目線の風景が、映画の中で繰り広げられる。
これ以上の興奮はないだろう。
轟音の鳴り響く車内は、それとは逆に静寂と緊張が走る。
ミュルサンヌを抜けて、また森の中の直線をひたすら走ると、右・左の直角コーナー、インディアナポリスがある。
そして、サーキットの中でもっとも低速のアルナージュコーナー。
さらに、ストレートを疾走して、ポルシェコーナー。
ここから左右のコーナーを抜けて、最終コーナー、フォードシケインを抜けるとメインスタンド前。
この映画の撮影の頃に、最終コーナーのフォードシケインが作られたと有るが、この映画には既にフォードシケインが有る。
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ピットの風景や、ドライバーの服装・ヘルメットなどは随分違いが有る。
メインストレート沿いにピットが有るのも、今とは大きな違いだ。
スタートシーンも、この映画の撮影で最後となった、ル・マン式のスタート。
ドライバーがレーシングマシンに駆寄って、乗り込むところから始まる。
今はもう見られない風景だ。
そして、もっとも大きな違いは、ドライバーの乗り換えだ。
昔は、チーム内で複数台を走らせていた場合、レース終盤に残っている車にチームの総力を注ぐ為に、リタイアした車のエースドライバーを残っている車に乗せることがあった。
映画では、まさにその形でラストラップのバトルが繰り広げられる。
古き良きル・マンの意気な作戦がドラマをもり立てる。
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マックィーンは、この映画をル・マンのレースを見せる映画にしたかった様だが、数々の困難の後、恋愛模様を織り交ぜることになってしまった。
と言って、それがどうということにもなっていないと思う。
つまりは、主役はレーシングカーであり、ドライバーたちのしのぎを削る戦いであったということだ。
今年も、6月に24時間レースが予定されている。
楽しみだ。
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