QTaka

れいこいるかのQTakaのレビュー・感想・評価

れいこいるか(2019年製作の映画)
4.0
神戸、震災、追悼。
表向きに語られる物語とは別に、一人ひとりの、その日その瞬間の出来事が有り。
それぞれの、その後の人生も有る。
その日を境に、大きく変わっていった人生も有る。
語るほど、ダイナミックでも、スマートでも無いけど、そうやって生きている人がいたんだと思う。
そんな、生々しい人の生き方を見たような気がした。
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不器用な人たちが、その瞬間から、さらにさ迷うように時を重ねた風景が有った。
喪失感を、ただ悲しみで現したり、受け止めたりすることでは無く。
その気持ちを受け止めることすら上手くできなかった姿をそこに見た。
何年経とうと、その失った姿を忘れられない。
そんな素の姿をどうやって見せたのだろう。
確かに、器用に”受け止め”たり、”悲し”んだり出来ないことも有る。
あるいは、実際に、出来ないのかもしれない。
大きな災害を、多くの喪失をテーマにした時、とかく真っ正面から受け止めた表現が正しく受け止められがちだけれども、そんなに上手く事は進まないのも現実のはずなのに。
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本作では、ほとんどのシーンで、まず泣くことは無いと思う。
多くのシーンは、平凡な日常生活で、その喪失と向き合う場面は少ない。
震災の瞬間、その命が奪われたそのシーンにおいても、それは瞬間の出来事としか描かれていない。
ただ、”イルカショー”だけは、無事では済まない。
なんなんだ、この展開は。
なんなんだ、この表現は。
なぜ、イルカショーで、泣かせるんだ。
このカットまでの、淡々と、あるいは意味不明とも言える、あるいはそれこそ”人生色々”的な展開に、一体どんな伏線が仕込まれていたというんだ。
何も無かったじゃないか。
それなのに、なぜ、水族館のイルカショーが、涙を呼ぶんだ。
分からない。全く分からない。
でも、そういう表現なのだ。
いまおかしんじ監督は、一体何をしたのだろう。
完全に、監督の策にハマった感じだ。
物語の締めは、エンドロールに流れる音楽。
担当したのは下社敦郎さん。
映画にどっぷりと浸かった後で、日常へ引き戻してくれるBGMが優しい。
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大阪アジアン映画祭に伴う”大阪アジアン・オンライン座”にて鑑賞
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