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ラ・ジュテのQTakaのレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
4.7
記憶を辿る不思議なストーリー。
モノクロ静止画とナレーションと音響効果。
たったコレだけの表現で、こんなにも惹き付けられるのか。
たった27分55秒で、こんなにも長い物語が描けるのか。
記憶の中の女性は、静止画の中で生き生きと描かれ、まるで動画を見ているようだった。(その姿が、動いていたかどうかは、夫々の目で確かめられるのだろう)
そして、その記憶の中のアンカーは、正に私自身について起こっていたというラストは、衝撃的だった。
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第三次世界大戦。
焦土と化したパリ。
地下に潜伏する市民。
不毛の地と化した地上。
今、ウクライナで起こっている惨状が重なる。
1960年代に撮られたこの映画は、正に未来を見据えていたのだろう。
あるいは、その冷戦期に、今にも起ころうとしていた第三次世界大戦への警鐘も有ったのだろう。
戦争の起こる前の平和な時間と、その後の過酷な現実。
そして、不透明な未来の世界。
それらを繋ぐ科学の危うさ。
時間旅行は、希望と狂気の産物なのだ。
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本作は、『12モンキーズ』の原作であり、
筒井康隆が、『時をかける少女』を執筆するきっかけになり、
あるいは、『ターミネーター』の未来からやってきて人類の破滅を止めるというストーリーになったと言われる。(町山智浩氏より)
なるほど、私たちが見てきた多くの物語に繋がるのもよく分かる。
ただし、それが、この静止画とナレーションという方法で現されていることには、驚きしかない。
この魅力的で、刺激的な表現手法に感服した。
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