まりぃくりすてぃ

希望の樹のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

希望の樹(1976年製作の映画)
4.7
いつ頃の作かにかかわらず、ジョージア(グルジア)映画を堪能することは全世界的トレンド。時代の難しさが地球規模で続いてる以上は。
特にこの『希望の樹』には、私たちがジョージア映画に求める要素がすべて詰まってる。
──マジメさ。
──美しさ。
──非道さ。

添加物として、ユーモアもある。ただし、さほど笑えない。じつはここがポイント! 笑わせ役っぽいのに笑わせてくれなかったりする、邪魔っぽいユニークさの異端者が何人もいて。男もいれば女も。ところが、マトモなつもりの村社会の絶対多数たちが暴走していく終盤、それまでノイズでさえあった異端者たちが、次々「ちょっと待て」「おかしいんじゃないの?」「野蛮だ!」「それでも人間か!?」と立ち上がって私たちの声を代弁し、なぎ倒されていく。
そしてヒロインは、ぐちゃにされる最後の最後にこそ一番美しい。
結局は悲劇しかないのに、このカタルシスの大きさは何?
映画に込められた祈りの大きさ。

戻って冒頭、赤花(ケシ)畑に白馬、白服の牧童青年。少し後、馬が消されて沈痛の青年は赤シャツで風景に埋没する。この詩情は何?
映画への愛の麗しさ。

聞けばアブラゼ監督は、全作品の全場面を人生最後のつもりで毎回命削って撮った人だという。「祈り三部作」の制作過程で逮捕も覚悟したと。
思想統制きつかったソビエト時代、ほかに多くの芸術家たちが投獄(処刑も)されたらしい。そんな中、一生牢獄から出られない身となっても「自分の死後にみんなに読まれることだけを信じて」獄中で紙切れに詩を書きつづけた詩人もいたという。
私たちもみんな、もっともっと強く真っすぐに、、、、、、、