踊る猫

誰も知らないの踊る猫のレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
4.2
二度と観たくない、と思った。だが、むろんそれは駄作だからではないし、こちらを不快にさせる要素があるからでもない。傑作なのは認めたい。だが、キツい内容でありその内容を有無を言わさず呑み込ませる力があるからでもある。4人の子どもたちの疑似家族的な生活を丁寧にかつ上品に描いたこの映画は四季の色とりどりの情景描写の美しさと、細部まで丁寧に描いた人物描写によって生々しいヒューマン・ドラマとして結実している。それにしても、「家族」とはなんだろう。誰もが知るようにこの映画のあとに『万引き家族』は撮られたわけだが、両者を併せて考えると「家族」の持つ魔性の魅力について思いを馳せてしまう。「4人」が一緒に住めなくなるから児童相談所や警察に相談せず、まだ12歳という若い子どもがリーダーとなって生活を営むことに悪戦苦闘するその姿が胸を打つ。故に、彼らが真綿で首を絞められるが如く苦しむ映画を私はこれ以上観たいと思わない。むろん、そこから逆算して今「誰も知らない」かもしれない事実を見極め直視する義務が私にはあるのだが。
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