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スプラッシュのtjZeroのレビュー・感想・評価

スプラッシュ(1984年製作の映画)
3.8
『ターミナル』のレビューで、トム・ハンクス主演作の魅力は彼の”リアクション芸”にある、と書きました。

その趣旨を補足・発展させながら、本作のレビューにつなげていこうと思います。

フツーの映画の主演者をA、共演者やシチュエーションなどの素材をB、作品の出来をC…とすると、

A+B=C

という公式が成り立ちます。

このAがコメディアン出身のトム・ハンクスの場合、秀逸なリアクション芸により素材への化学反応が活発で、Bがより引き立ちます。
なので、

A×B=C´

という掛け算となり、作品の出来(C)も進化(→C´)します。

ですから、ハンクス主演作の場合、Bの素材が常軌を逸脱していればいるほど化学反応も活性化し、作品のクオリティも上がります。

『アポロ13』ならBは”帰還困難な宇宙船”ですし、『キャスト・アウェイ』なら”南洋の孤島”、『ターミナル』なら”外に出られない大空港”になります。難しいミッションであればあるほど、困り果てるハンクスのリアクション芸が輝きます。

また、上に挙げた公式は、シチュエーション・コメディの”お題”としても有効です。
すなわち、「もし、トム・ハンクスが欠陥邸宅に住むことになったら」が『マネー・ピット』ですし、「少年の心を持ったまま大人になったら」が『ビッグ』、「アメリカ現代史の隠れた主役だったら」が『フォレスト・ガンプ』になります。

そうすると、本作のお題は「ハンクス演じる青年の初恋の相手が人魚だったら」になります。
突飛な設定を与えられ、まさに水を得た魚のように、ピチピチと活きのいいリアクション芸を披露してくれています。

こうしたリアクションが魅力の俳優って、イギリスではヒュー・グラントかなあ、と思いますが、現在の日本では大泉洋さんですかね。
大泉さんは純粋な意味ではコメディアンではないかもしれませんが、世に出たきっかけとなったヴァラエティ番組『水曜どうでしょう』では、深夜バスに連続して乗せられたり、ドッキリで海外の僻地に連れて行かれたりして散々な目に遭い、その際の達者なリアクションが大いなる魅力となっていました。

大泉さんも今後、より突飛で破天荒な設定の作品にチャレンジして、その卓越したリアクション芸を発揮してもらいたいと思います。
とりあえず、本作の新たな吹替え版を作る際は、大泉さんにハンクスの声を当ててもらいたいですね(笑)。
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