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うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのchi6cuのレビュー・感想・評価

5.0
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」鑑賞。
初見です。観たい観たいと思いながらも見逃し続けてこの度やっと友人にBlu-ray借してもらい鑑賞。
傑作と名高い作品。
この上なく期待して観ましたが、予想を裏切り、大傑っっっっ作でした!!!
1984年作品。信じられない…!!

「うる星やつら」はアニメ観ていた記憶はあるものの、登場人物をなんとなく覚えている程度。
私は「らんま1/2」世代です(笑)
とはいえ、高橋留美子作品には小学生からどっぷりで、「人魚の傷」くらいまでは短編集まで読むほど好きだったなあと、しみじみ思い出しました。

「ビューティフル・ドリーマー」はあまりのパラレルワールドぶりに高橋先生は納得されてないとも聞きますが、
キャラクターの本質は変えずに世界だけをひっくり返し、それでいて高橋留美子作品らしいうすら恐ろしく曖昧な雰囲気も漂い、原作に対するリスペクトは大いに感じます。
内容に関しては何言ってもネタバレになるのですが、
始まって約1時間は全く先が読めず、ただただ不気味な世界だけが拡張していき、その中でいつも通りに過ごす彼らに焦りさえ覚えながら、必死で推理するまさにミステリー。
ネタばらしがなされた後も見えない着地点。
完全なる伏線回収。脚本、お見事。

宮崎駿の「ルパン三世 カリオストロの城」同様に、新進気鋭のアニメーターが著名な作品の世界を借りてオリジナリティーを発揮する、というステージ。
まさにこの作品が押井守のオリジナリティーの生まれる場であり、後の「パトレイバー」「攻殻機動隊」に続くという事を大いに納得出来る内容でした。

押井守とは、SF作家というよりは幻想作家。
ボリス・ヴィアンやフランツ・カフカのような幻想的で歪んだ世界を皮肉を交えて描く事をアニメで初めてやった人なのかもしれないと「ビューティフル・ドリーマー」を観て思いました。
彼の作品の根底には常に愛のような感情論が存在し、世界を支配するのもその感情であり、それに対してなぜか人々は冷静で悲しげで、そして諦めない。
私の今迄観てきた押井世界は1984年のこの作品でもすでに完成していたのだと感動しました。

1984年。「風の谷のナウシカ」公開と同年。
翌年には杉井ギザブローの「銀河鉄道の夜」公開。
ああ、すごい、すごい時代だわ。
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