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陽なたのアオシグレのchi6cuのレビュー・感想・評価

陽なたのアオシグレ(2013年製作の映画)
4.0
「台風のノルダ」よりもこちらの方が好みだった。
内気な小学生たちの初恋をイマジネーション豊かに描いている。「大好き」という感情の広がりの永遠があまりにもまぶしく美しい。
性欲が芽生える前の恋だから戯れは手に触れるとかパンツ見ちゃった!とかなのだけど、あいくるしくてドキドキする。

大好きな同級生しぐれちゃんに想いを伝えられず、毎日彼女との妄想をふくらます少年ひなた。
平凡な毎日はしぐれと一緒なら夢のような世界に変わり、その世界は広がり続ける。しかし、しぐれが転校することになり・・。
ひなたがしぐれに想いを告げるまでの冒険がはじまる。
この上なく壮大に。

恋に叫んで疾走する男子と言うのは、どうしてこんなにも胸を打つのか、と映画を観るたびに思う。
「箱入り息子の恋」でもそう。実に非現実的なシチュエーションだが、世界一ドラマティックで素敵な男性の描き方かもしれない。疾走する彼らを席から乗り出して胸に手を当て見守る自分がいつもいる。

少年にとって初めての恋の終わりに世界は枯れ果て、思いの結実のために再び世界は花開き一気に加速し浮遊する。
この疾走感はおそらく全盛期のジブリのそれである。
イマジネーションの世界は拡張し続け、現実にリンクして思いはスクリーンを飛び跳ねる。
この間、もうスクリーンとの境がわからない!
気がつけば涙が出ていた。
あまりにもエネルギッシュな数分間の少年の少女への旅は思いつく限りの彩りに満ちて息もできない。
今思い出しても鳥肌が立つほどに感動的だった。

そして結実の時、少年の口から出た言葉の誠実さにまさしく「ズドン」と心が叫ぶ。
ああ、女は恋で男を成長させる。
少年は恋を知り、恋を片付け女は受け止め全てを持ち去る。

「台風のノルダ」「陽なたのアオシグレ」ともに少女は少年の成長のための道具と言っていい。
少年は少女を思い、行動することで勝手に成長する。
少女は何も望まなくとも少年を育て上げてあとくされなく去っていく。
しかし、最終的にその男たちによって女は美しく成長してしまうのだ。
たった数分の短編アニメに男と女の摂理を観た。
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