よしまる

ローズマリーの赤ちゃんのよしまるのレビュー・感想・評価

ローズマリーの赤ちゃん(1968年製作の映画)
4.5
 こちらもふと観出したら止まらないパターン、本当に久しぶりでやっぱりめちゃくちゃ面白かった。

 ロマンポランスキー35歳の時の作品。
 個人的には「チャイナタウン」のほうがドラマとしては1番。ただし、ひとつひとつの演出、演技、趣向を凝らしたシーンについては本作のほうが断然楽しめる。
 
 タランティーノのワンハリを観てから、この1年後に起こるシャロンテート事件に想いを馳せたり、最近我が国でも猛威を振るっているパワハラとセクハラのコンボ技はどこまでが真実だったのかと考えてみたり、このお騒がせな監督についてあらためて色々考えさせられることしきり。

 しかしながら、あの悲劇が訪れる前の、純粋に作劇を楽しんでいるポランスキーがなしえたひとつの到達点だったんだという考えに至った。

 60年代の多くのファッションアイコンの中でも異彩を放つミアファローが演じるローズマリー。そのキュートさは神がかっているし、悪魔の受胎、集団レイプなど数多くのフォロワーを生み出したシチュエーションをオリジンとして見事に生み出している。彼女の演技なくして本作は成立していないと言ってよいだろう。
 オーメンやエクソシストどころか、エイリアンだってミッドサマーだって本作の前には亜流でしかなくなる。時代がかった演出は好みの分かれるところとは言え、これが54年前、つまりボクの生まれたときに創られていたことにあらためて驚く。

 ダコタハウスを舞台としたゴシックホラーの体裁。ジョンカサヴェテスとミアファローの新婚夫婦によるアパートの改装、インテリア工事が仕事柄めっちゃ楽しい。

 監督とは同じポーランドのジャズピアニスト、クシュシュトフコメダのテーマ曲。ミアファローのスキャットも大好き。ララララ〜♪
 でもサントラを夜中に聴いてるとマジで怖い😱

 ご近所のお婆ちゃんは「ハロルドとモード」のあのバアさんだったと今ごろ気づく。よくあるありがた迷惑な隣人?マジでおかしな人?どっち?
 人付き合いに関する夫婦の考え方の相違とか、ちょっとずつズレていく際の描写も秀逸!そしてなかなか真相を明かさないプロットが、視聴者をローズマリーと一緒に疑心暗鬼にさせてまったく飽きさせない。
 2時間越えながらここまでドキドキの持続する映画も珍しい。

 妊婦姿で車の行き交う大通りを信号もないのに渡っていくシーンはぶっつけのゲリラ撮影。電話で必死に助けを求めるシーンは電話ボックスに入ってから出るまで約4分にわたる1カット長回し。

 書き出すとほんとキリがない、こうした演出とそれに応えるミアファローの熱演だけでも10回くらい見る価値がある。

 最初の話に戻ると、その後に起きたマンソンファミリーによるシャロンテート殺害事件やプロデューサーウィリアムキャッスルの病気、音楽のコメダの事故死など「ローズマリーの呪い」については実はあまり興味がない。
 この年、ミアファローがビートルズと一緒にインドに行ったからといって、後々この映画の舞台のダコタハウスでレノンが射殺されたことまで引っ張り出してくるのはいくらなんでもと思う。
 こんなこと書いといてなんだけど、未見の方にはそういうゴシップは一旦わきに置いておいて、純粋に映画として楽しんでもらえたらいいなと思う。