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戦火のかなたのsayasのレビュー・感想・評価

戦火のかなた(1946年製作の映画)
4.3
ネオレアリズモの名作が観たくて鑑賞。
戦争を実際に体験していない平和ボケしている私にとって定期的にこの"新現実主義"が教えてくれる不条理・絶望・やるせなさ・貧困社会・戦後の混乱などハリウッドの華やかさなんてない戦争が生み出したリアルで悲惨な現状を目の当たりにすることでいつもボケた心をリセットしている。私はどちらかというとハッピーエンドではなくバッドエンドの方が性に合うたちなのでそれもこのムーヴメントが好きな理由の一種に入るかもしれない。勿論この手の映画は心が抉られるのでずっと観ている訳では無いけどどうしても定期的に観たくなる。今後もマイペースに私の好きなネオレアリズモ作品を始めとするイタリア映画の巨匠達ロッセリーニやデ・シーカ、ヴィスコンティ...を追っていきたい。ゆくゆくはロッセリーニの"戦争三部作"をコンプしたい。

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第二次世界大戦末期、連合軍はドイツ軍を追ってイタリア半島を北上した。
連合軍兵士とイタリア民衆が交流する6話のオムニバス形式。ロッセリーニらはストーリー性を排し、数か月前に起きた戦場の真実を、生々しく荒々しくリアルにフィルムに移し替えた。
出演者は素人、無名時代の若きフェリーニが脚本を書き、助監督として協力した
(ivc.tokyoより)
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ロベルト・ロッセリーニ天才か...驚くべきプロットの飛躍、類まれなる才能を発揮していて実に驚いた...特に第1話のクライマックスからロッセリーニの魔法が炸裂し始めている。それに実際に起きた出来事を骨組みにして1本の作品に仕上げているのだから...
1シチリア→2ナポリ→3ローマ→4フィレンツェ→5ロマーニャ地方修道院→6ポー川流域

オムニバス形式なので1話あたり20分程度なので少しずつ進めても見やすかった。時間がない人は何日かに分けてエピソード毎に区切って観るのも良し。一気に観るのも良し。
そして、全話の頭に当時の戦時中のニュース映像が挟まれているのだけどなんの違和感なく物語に繋げているのが凄い。確かにWWⅡ終戦から間もない頃に撮影されているから戦時中と同じ廃虚や荒廃した土地が残っていたからこそ出来たのだろうと思ったし、何より殆ど無名の俳優を起用して、彼らの飾り気のない存在感がリアルな匂いを作品に与えている。人為的に作られた映画と言うよりかは本当にイタリアの当時の光景と市民の様子を写し撮られたドキュメンタリーを観ているようだった。

1話のドイツ兵に立ち向かうイタリア娘と2話の戦争孤児とアメリカ兵の交流が私の情に訴えかけてきてとても好みな物語だったので続けて2周してしまった。
心に直接ズーンと来る感じ...この心打たれる感覚が好き。3話の娼婦と兵士の皮肉な再開と別れや最終話の戦争の残虐性等どれも忘がたく胸に迫る物語でロッセリーニの反戦の意がひしひしと伝わって来る名作だった。
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