Naoto

女の都のNaotoのレビュー・感想・評価

女の都(1980年製作の映画)
3.5
当時けたたましく叫ばれたフェミニズム運動を基に性に対する思考実験を行った作品。

物語は変態オヤジ、スナポラツが電車の中でナンパするところから始まる。
「あぁ、君に恋してしまった…。」
「妻はいないんだ(いる)」
などと妄言を吐くスナポラツを手玉に取って撒く美女。

待ってよ〜。と追いかけて行った先で待っていたのは、理想の美女ではなくフェミニストの巣窟。

男の支配に心身湯立つほどの怒りをあらわにしているフェミニスト達。
結婚生活はクソだと罵り、男の性欲を罵倒。
一妻多夫の女性が講演に招かれて喝采を受ける。

男なんていらねぇ!

運動はドラクロワが描いた革命のように、男の支配欲に一斉蜂起する。
フェミニズムという名の自由の女神を船頭にして。

そしてスナポラツは為すすべなく追放される。

その後、妻に日頃の怒りをぶちまけられるスナポラツ。
ここでも為すすべはなくオロオロするばかり。
そして浮気がバレる。

オロオロ。

記憶の中に潜っていき現実逃避。
あぁ、ここなら安全だと言わんばかりの潜在記憶の中にも、待ち受けるのはフェミニズム。

理想は蜂の巣にされ、
逃避したトンネルの先には安堵と共にまた愚かしい支配欲が一条の光を照らす。

性の問題となるととことん詰めが甘くなるフェリーニ。
逃避する(というか意味をいなす)タイプの思考回路なので現実問題になったら弱点が如実に出てくる。

とはいえ、
男性→女性にしろ、
女性→男性にしろ、
単純な力による(肉体的にも精神的にも)支配欲は何ももたらさないし、
被支配者が復讐のために支配欲求を募らせて爆発→立場が逆転→被支配者が…。
という、無限ループがうまれるだけだという暗示は一考の価値があると思う。

そして性の概念が進歩してLGBTQ +が認知されている今では、もっともっと複雑な均衡が求められている事にも気付く。

耄碌した巨匠が適当に作った作品。
と、一顧だにしないにはあまりにもったいない思考の機会が確かに存在していた。
Naoto

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