「死の商人」と呼ばれる武器商人が、武器の密輸売買で成り上がっていく半生を描いた物語。実在する武器商人の複数人から話を聞き、実際の出来事に基づいて制作されたフィクション映画。
オープニングの弾丸が製造されるところから使われるまでの「弾丸の一生」を弾丸視点で描いた映像には心を奪われる。
ウクライナからの移民でアメリカに渡ったユーリ・オルロフ。ある時、武器商人としての才能に気づき、法の間をくぐり抜け弟と一緒に世界中に武器を売りさばき成功する。
実在する船名や船籍への変更、じゃがいもの中に隠して密輸、飛行機に積んである武器を飢えた村人に無料サンプルとして配り10分で証拠を隠滅、軍用ヘリから武器をハズして別々に輸送、賄賂etc.....
いつもインターポールに見つかりそうになると瞬時に判断を下し、合法と違法の間のグレーゾーンを狙い回避していくユーリの頭の回転の速さと巧みな話術が観ていて爽快。
前半はユーリがドンドン成り上がっていく様や憧れの女性を口説いていくなど愉快な展開だが、後半は追われる身となり家族と仕事の狭間に揺れ動くシリアスな展開がとてもリアル。
自分は銃を売ってるだけだから、売ったあとは目の前で人を殺されようが戦争を始めようが関係ないという思考が凄い。終いにはヤク中になって更生した弟を巻き込むサイコパスな一面が恐ろしい。
ユーリが捕らえられバレンタイン刑事にこれから起きる未来を予測して伝えるシーンが印象深かった。
国連安保理の常任理事国である米・英・露・仏・中が武器供給国として戦地に輸出しているという事実がとても衝撃的。それと同時に政治批判もしているメッセージ性の強い社会派作品。
ニコラス・ケイジの優しい語り口調で進行していくのがとても心地良かった。
戦争する側じゃなくて、戦争をしない武器を売る側にスポットを当てたところが斬新。考えさせられる作品だと思う。
“経験上よい関係は嘘の上に築かれる”