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ジャーマン+雨のkoyaのレビュー・感想・評価

ジャーマン+雨(2006年製作の映画)
4.0
女の子映画、というジャンルがあるとして、男の人が必死に「夢の女」「永遠の少女」を追い求めているとしたら、この映画の横浜聡子監督は、「へっ」とかそっぽをむいているような気がします。
しかし、この映画はしっかりとした「女の子映画」

 この映画を観て思い出したのは、『下妻物語』なのですが、下妻の主人公、桃子は、わがまま勝手マイ・ペースであっても、「ロリータ・ファッション」という鎧を常に身につけていて、周りの世界から隔絶しようとしていたのですが、この映画の主人公、林よし子、16歳(野嵜好美)は、もう、裸、といっていいくらい無防備。

 がさつで、なりふりかまわず、勝手で、粗暴、両親が離婚しても引き取られず、一緒だった祖母は死に、一人暮らし。
学校にも行かず、好き勝手に、言いたい放題のように見えます。
顔がゴリラに似ている、ということからあだ名はゴリラーマン。

 「よし子が町に戻ってきた」・・・という元同級生、マキのモノローグから始まりますが、マキというのはごく普通の高校生で、ちょっとかわいい顔をしています。
でも、マキってかわいいけれど、ものすごく平凡でつまらない女の子。そしてマキもかなりのしたたか者ですね。
それに反して、よし子は、いわゆる美人ではないけれど、その言動の予測が全くつかない、驚きのキャラクター。
何を言い出すか、何をしだすか、全くわからない・・・そんな「おもしろい女の子」がよし子です。

 よし子は、口が悪く、すぐに怒り・・・・大人や周りに対してとても挑戦的で、したたかで、特に金に対してはシビア。
でも、よし子の家にはいつも小学生たちがたむろして、一応、たて笛教室ってことになっていますが、ごろごろしては遊んでいるばかり。
なんだかんだいって、元同級生のマキもごろごろ・・・・・。
そして、町で植木屋として働いている、ドイツ人の男の子、カイもいつの間にかよし子の家にちゃっかりいて、薄い麦茶を出してもらっている。(このすごく薄い麦茶というのが、いいですよね)

 歌手になりたいと思っていて、曲を作っているけれど、小学生やマキやカイの「トラウマ」を聞いてはノートに適当にふーんとか書いて歌にしています。

 傍若無人に見えるよし子にもあった「トラウマ」・・・聞き手の小学生三人組は「先生の大バカ話」としてたて笛で合奏、ぴ~ひゃらら・・・あ、やはり、やるんだな、リコーダーの「鼻吹き」
でも、よし子はそれを聞いて
「おまえたちっ!成長したなっ!」と叫ぶ。うーん、ここ見事ですね。

よし子は相手が子供だろうが、大人だろうが、同年代だろうが、変に顔色うかがって、媚びるようなことはしない。
子供を子供扱いしない、大人を大人扱いしない・・・自分と同等、という接し方をします。
男性、女性、青春、恋愛・・・そんな「性」や「悩み」を軽々と飛び越えてクリアしているような爽快感すら感じるよし子。

 小学生の町内ドッジボール大会に飛び入り参加して、小学生相手に湯気の出るような本気のドッジをするよし子。
なぜか、カイは、マキとつきあってもつまらなそう・・・むしろ、よし子に興味を持っているみたい。
そしてカイにせがまれて、オリジナル曲「ジャーマン+雨」を大熱唱するときのよし子のふくらんだ鼻の穴。

 いつも無愛想で、不機嫌そうな顔をしているしたたかなよし子ですが、最後に笑う。
その時気づく、あ、口元にえくぼがあったんだな・・・

 よし子もいそうで、いない夢の女の子。
本当にいたら困るようなおもしろい女の子っていうのも、夢の女の子でしょう。
個人的には、わたしは外見がかわいい、かっこいい・・・人よりも、「中身が面白い人」の方が興味ありますね。
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