てつこてつ

サンタ・サングレ/聖なる血のてつこてつのレビュー・感想・評価

3.6
「ホーリー・マウンテン」は残念ながらも自分には合わなかったものの、こちらの作品も一緒にレンタルしていたので鑑賞。

Wikipediaによるとアレハンドロ・ホドロフスキー監督初の“商業映画を意識した作品”だそうで、それが事実なら、確かに「ホーリー・マウンテン」と比較すると難解さはなく分かりやすい・・と同時に商業映画を大いに皮肉った実に攻めた作品だなと感じた。個人的には、やはりカルト映画のジャンルが一番相応しいと思う。ちなみにカルト映画は自分の中では褒め言葉のつもり。

サーカス団長の息子を主人公にしたストーリー。前半は、フェリーニの世界観をよりダークにした描写で、中盤で突然、ダリオ・アルジェントさながらの鮮血飛び散るスプラッター描写が登場するという・・。全体としては芸術性を意識したサイコスリラーといった作り。

両手の無い制服姿の少女の聖人像、絵の具を“聖なる血=サンタ・サングレ”と崇めるカルト教団の寺院、その教祖で主人公の母が、自身が崇めた聖人像そのままに夫に両腕を切断され絶命する・・など、ストーリー序盤で衝撃的な(だがグロさはない)展開があり、それがその後の物語の伏線となる作りはなかなかの物。ラストシーンにいたる一連のシークエンスは秀逸過ぎるし、同時に絶妙な哀愁感が漂う余韻がいい。

マリアッチ、ルチャ・リブレ、死者の祭りなどメキシコを代表する風物詩をさりげなく劇中に登場させる演出も上手い。

少年時代、青年時代の主人公をそれぞれ演じたのがホドロフスキー監督の実の息子さんというのも驚き。二人とも美形で、画面に実に映える。
作品の主題ともなる手、指が細長くて動きがとても優美。

映像美もさることながら、作品全体を通して流れるサーカスをモチーフにした楽曲も、時に楽しげに、時に寂しく、とても印象的だった。
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