軍隊の中で反戦を語る状況、苛烈な労働の中で思想を紡ぐことは「リアル」ではないが、この壁を乗り越えて「感情」のままに反戦を叫んだ、という意味では記念碑的な作品。(欧州ではキリスト教的な道徳が基準になる)。良くも悪くも反戦演説映画の先駆けで、恣意的な抜粋や改ざんが問題になっているきけわだつみのこえと共に評価には困る。
紅萌ゆるやモンティーニュから学生生活にイメージをつなげるあたりは学徒兵の限界そのもので、これが農村出身だったら、あるいはナショナリストならどう表現するのかと問いたくなる。ひろしま、もそうだったが戦場の悲惨そのものではなく内地の思い出をままにノスタルジーとして表現してしまうことに抵抗はなかったのだろうか。
雨の神宮球場から泥まみれの行軍にオーバーラップするところだけは良かった。