HK

レスラーのHKのレビュー・感想・評価

レスラー(2008年製作の映画)
5.0
ダーレン・アルノフスキー監督によるミッキーローク主演の落ちぶれたプロレスラーを主役にしたヒューマン映画

ほとんどの撮影方法が主人公ランディが歩く姿を後ろから撮影するフォローショットをメインとした撮影が行われているが、ランディがこれまで歩んできた人生が背中からにじみ出ているようであった。これぞ背中で語る男である。

自分のアイデンティティや人生は全てプロレスに捧げた男”ラム”ことランディ。しかしそんな自分の居場所であるプロレスが神様の悪戯で出来なくなってしまった。自分の居場所を失って初めて気づいたのは、自分がどれだけ他の世界を粗末にしてきたか、そして自分がどれだけ他の世界では馴染めないかということであった。

様々な人と衝突して改めて自分のいるべき場所に気づく男ランディ。その男にはもう迷いはなかった。

個人的には、もう最後の入場前でのキャシディとの会話シーンで、ほぼ号泣しかけました。個人的にはあしたのジョーにおける矢吹ジョーと白木葉子の会話を思い出した。もう俺にはこの道しかないのだ。だから神にさえその道を捨てる権限はない。捨てる権利があるのは俺のファンだけだ。最後のマイクパフォーマンスこそ、彼の人生をそのものを表わしているようであった。

素晴らしい映画であった。アルノフスキーさんの作品は「レクイエムフォードリーム」しか見ていなかったが、他の作品も見てみたいと思った。
HK

HK