てつこてつ

西瓜のてつこてつのレビュー・感想・評価

西瓜(2005年製作の映画)
4.0
第55回ベルリン国際映画祭銀熊賞芸術貢献賞受賞作。

久々にインパクトを受ける作品を見た!台湾映画で、ここまで大胆、且つ、真面目にエロスを追求した作品は初めて。

1時間50分もの上映時間の中で主人公となる若いカップルが喋る台詞は、作品が開始して35分くらいに女性が喋る「まだ腕時計を売る仕事続けてるの?」のたった一言のみ!そう、男性は全編喘ぎ声以外の台詞は一言も話さないし、そもそも作品に登場するキャラクターたちが発する言葉の台詞が極端に少ない。一番目立つのは夜桜すももなる日本人AV女優が話す内容だという・・。これぞ、ツァイ・ミンリャンなる映像作家の世界観か?

タイトルは、確かに「西瓜」以外に何も相応しいものは思い付かない程、冒頭のあまりにも前衛的な半分に割った西瓜の使い方(牛丼食べながらだったので思わず吹き出した!また、その後のシーツの洗濯とか考えると絶対個人的にはあんな使い方はしない)を筆頭に、要所要所のメタファーとして西瓜が登場する。

唐突に挟み込まれるシュールなミュージカルシーンも、台湾第二の都市である高雄の観光名所、澄清湖や龍虎塔で有名な蓮池潭を全面借り切った壮大なスケールで、とにかくシュールさが際立つ。(ちなみにこれらミュージカルシーンでは主演の男性も歌ってはいるが、おそらく口パク)

主演の男性の役柄設定がAV男優ゆえ、R-18指定は納得のそこそこ激しい絡みの描写もあるが、1シーンだけ、「え、これ、モザイクかけなくていいの?」と感じた程、強烈なシーン有り。

全編ほぼ台詞が無い中でメタファーに次ぐメタファーの連続描写であったが、不思議と全く飽きが来ず、次はどんなシーンが来るのか楽しみであった程。個人的には、直接的な性描写よりも、油で揚げたビーフンの上にエビやハマグリの餡を掛け、それがビーフンに染みこんでいくショットや、蟹をむしゃむしゃ頬張る二人の口元をシルエットだけで見せるショット、テーブルの下で寝そべりながらタバコを吹かしていた男が椅子に座っている女性の素足の裏にタバコの煙をフッとかけて、そのまま女性の足の指にタバコを挟んで吸い続けるショットにそそられた。

多用される長回し、広角レンズを使用し定点撮影したショット、鏡を巧みに利用したトリック撮影、デパルマばりに二画面分割にも見える終盤のシーンなど様々な印象に残る撮影手法も、エロスと淫靡を全面的に描きながらもギリギリの所でお下劣には行かず、アート系の作品の範疇に留まらせているのに成功している。

作品のWikipediaページには、「純愛を描いた作品」とあって、最初はえ?となったが、ラストシーンは、男の気持ちからすると確かに純粋な愛情故に主人公がとった行為なんだろうなと、どこか附に落ちた。

こういうチャレンジングな作品は大好物。わざわざレンタルした価値は十分に有った。
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