滝和也

平成狸合戦ぽんぽこの滝和也のレビュー・感想・評価

平成狸合戦ぽんぽこ(1994年製作の映画)
3.6
よいやっさ

歌い舞い化ける
昭和中期の多摩の狸の
開発抵抗大合戦!

令和となった今にそれ
を見ると何かと
感慨深きは…

「平成狸合戦ぽんぽこ」

平成に成りたての頃、多摩開発は最後の行程に入り山は崩され、斜面に異常な程おしゃれな建物が張り付き出した…。その頃、小汚いアパートから変化を僕は眺めていた…。何となく昔を思い出しましたが…この舞台に正に住んでた事があるんですね(^^)

多摩ニュータウン開発、昭和の高度成長期の巨大事業は多摩丘陵に巣食う狸たちの生活に大打撃を与えた。長老の鶴亀和尚を始め皆が対策を要し、中には変化の術で人間を殺めるものまで出始めていた。話し合いの上、四国と佐渡から
大師匠を呼び、人間に対抗しようと立ち上がるが…。

そもそも…高畑が宮崎駿らに狸映画の監督にされ、合戦ものを作りたくて作られた作品なので…確かに彼らの望む日本の原風景的なものへの回帰、自然との共生などのノスタルジーが存在するわけだが…コメディかつエンターテイメント精神が目立つ楽しげな作品である部分も目立つ。

そもそも三代目古今亭志ん朝の名調子で語られる戦争絵巻か、戦争ノンフィクションの様な語り口。そこにたぬきと言うのほほんとしたイメージの動物たちがコメディ的、時にはシリアスに人間の開発を妨害する。四国の長老様たちが来て巻き起こす百鬼夜行ばりの大作戦はエンターテイメントとして楽しく、クライマックスだろう。またその作戦後の抗戦派であるゴン太たちの壮烈さはシリアスかつ悲しい。

この作品で鉄腕ダッシュで出た新宿のお寺に住まう狸が語られる。また平成初期の開発は確かに緑と共生しようとした作りだったなとふと思い出した。確かに東京やそこに隣接する場所は…そうであっても共生に気付く前に開発され…動物は駆逐され…今も東京だけが人口が増え続けている…。手遅れだ。

だが地方は…誰も住まなくなった家が崩れ森に飲み込まれ始めている。令和となり、昭和平成初期と明らかに自然との関係は変わり始めている。ある意味人が減り始めた場所は自然に飲み込まれ…狸たちが増えているのだ…。東京以外は…。また人間が崩した気候変動で餌がなくなり、獣たちが人の領域に戻ってきている。何とも皮肉ではないか。作中で語られた形に令和であればならない…。町田からもう少し来たら令和なら彼らは問題ない。

確かに人は自然との共生が大事だ!と語ったが…上っ面だけはねてきたのに、人口減少と言う問題から…開発はある程度止まり大都市のみが問題になった。この作品をみるとこの現実と比べてしまう。不思議な違和感を禁じ得ない…。
滝和也

滝和也