あなぐらむ

レッドラインのあなぐらむのレビュー・感想・評価

レッドライン(2007年製作の映画)
3.5
一応本作のウリは、エンツォ・フェラーリやメルセデス、ランボルギーニ・ディアブロといった世界のスーパーカー(笑)が登場して公道でデッドヒートを繰り広げる、というカーアクションの部分なんだが、困ったことに公道カーレースアクション「ワイルド・スピード」シリーズの10分の1も「速く見えない」。
いや確かに実車が派手にぶっ飛んだりクラッシュしたりしてくれるんだが(実際にエンツォ一台ぶっ壊したそうだ)。

おまけにお話は突然ギャングものになったり格闘アクションになったり、突然C4プラスティック爆弾が登場するワンマンアーミーものになったりとあっち行ったり、こっち行ったりで収まり悪いったらない。
あらすじには父を亡くした娘の感情とかも書かれているが、そんなもの「殆ど描写されない」。
だが、それでこそ「バカ映画」なんである。

映画的に面白そうな全ての要素を意欲的に取り込みながら、それが微妙な塩梅でスベる、そのスベり具合と泥臭さはそう、香港映画の2戦級の香りがぷんぷんするのだ(なんせ監督はアンディ・チャンという華人=元スタントマン)。
何しろ主人公が美人でスタイル抜群、しかもプロ級の腕のドライバーというその設定からしてもう何をか言わんや、である。
公道レーサーに賭けるブルジョアたちはどいつもこいつもチャラくてエロいボイン姉ちゃんを周りに侍らせていて、フレームインしてくる際には必ずピンヒールとミニスカの足元からティルトアップするというなんとも礼儀正しいカメラワーク。
女と、高級車と、アクションと。ここには安い男の夢が全て詰まっている。
とりあえず劇場に入って1時間半潰すには丁度いい具合の「何もなさ」。
これこそが実は本当の「バカ映画」なんじゃなかろうかと俺は思うのだ。

実際のところ、タランティーノ登場以降、「バカ映画」「ジャンル映画」は「狙って作る」ものになってしまった感があって(それは日本映画においても同じ)、そんなマニア向けネタを自慢するような映画は、「ほら、こういうの好きなんだろ?」みたいな映画はやっぱり居心地が悪いのだ。
"おたく"の「ビジネス」化はつまらない、という事。

そういう意味で(どういう意味だ)箸にも棒にもかからないこんな映画こそ、「表参道」「六本木」「下北沢」には似つかわしくない、銀座シネパトスで地下鉄の音を気にしながら見るようなこんな映画こそ、俺は愛したいと思ったりするのだ。
主演のナディア・ビョーリンがええオンナだったから、それでOK。