バナバナ

シークレット・サンシャインのバナバナのレビュー・感想・評価

4.5
シネは夫が亡くなった為、息子とソウルから夫の故郷の町・密陽に引っ越してくるが、そこで事件が起こる…。

シネの夫は交通事故死らしいが、浮気していたという事だから、もしかして、相手の女性と一緒に車に乗っている時に事故死して、浮気が発覚。
そして、ソウルに居た周りの友達にもその事が知れ渡ってしまい、
「かわいそうな女」と言われるのが嫌で、夫の故郷の町に来たのでは…、という気がする。

小さい息子にワンポイントのカラー入れたり、一言多かったり、
さもお金を持ってる様な事言う自慢しいなところもあるし、
子供をぞんざいに扱ってるんじゃないかとの意見もあるけど、
母子家庭でなくても24時間マリア様みたいな事はやってられないし、
近所の人と仲良くやろうとしてのカラオケ大会だったので、
シネは特に悪い事などしていない普通の人だと思う。

事件が起こり、心の穴を埋める為に、シネはキリスト教に傾倒していくのだが、そのキリスト教に疑念を抱くきっかけが非常に上手いし、
また、犯人の娘の出し方が、シネのキーポイントのここぞという時に出てくるので憎い。
シネはキリスト教で「汝の敵を愛せよ、隣人を愛せよ」と教わってきて、自分は救われたと思っていたが、
町で犯人の娘が虐められている所を見た時、助ける事ができなかった。

~私はキリスト教を信仰している信者なのに、まだ許せないの? そんなバカな!~
という気持ちから、彼女はああいう行動を取ったのではないか。
しかし、そこで見てしまった現実。

~どういう事? 被害者の母である私は、苦しんでのたうち回って、やっと心の平安を得たのに、あんなひどい事したあんたが、なんで涼しい顔してんの? 私の断りも無く、勝手に神様から許された? ハァ? 冗談じゃないわよ!~
ここら辺から、シネがどんどん狂っていくところが見事でした。

対する、シネが密陽に来てから、彼女に一目ぼれしてずっと陰で支えるチョン・ジャン。
がさつだし、お節介で距離近いし、女にモテそうにない男だが、彼の行動が甲斐甲斐し過ぎて、癒された。
だって、シネを追って信じてもいないキリスト教に自分も入信し、
女子会の様な勉強会にも男一人で参加するし、本当はやりたくもないのに駅前で賛美歌まで歌っちゃう。
これ、信仰心の為ではなく、全部シネの為であり、あくまで手段なんである。
女は惚れるより、惚れられた方が幸せというが、こんな人が傍に居てくれるって、大きいよ。

この、一旦宗教に逃げるが自分の本心のために破綻を来してしまう女と、あくまで自分の生に忠実な男との対比が見事でした。

ラストも、また犯人の娘が出てくるが、もうシネの心に迷いはない(犯人の娘さんにはかわいそうだけれども)。
髪を切るのと同時に、これからは前を向いて生きてほしいな。
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