けんたろう

ソナチネのけんたろうのネタバレレビュー・内容・結末

ソナチネ(1993年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

鮮烈なる銃撃と、刹那々々の生活の物語り。


断絶せしカツトの連続に因る、離散的なるストオリイ・テイリング。チラリと見せ、然し皆なまでは見せず。其の繋がりを排しゝ語り口の潔さには、粋を感ず。
又た、死へと誘なふ青き月光や、久石譲の諦観せし音楽も非常に魅力的。終始惹かる。
然うして、表情硬き男の狂気なる笑みと、死を横目に毅然と生くる様。嗚呼、何うしやうもなく格好良し。甚だ昂奮を覚ゆ。
加へて、ガキの遊戯に享楽するヤクザたちの、尚も虚勢を張る姿。チヤミングで且つユウモラス。斯ういふ怖い連中の非現実的なる愛嬌は、往々媚びを以て表現せらるゝものだが、然し本作は決して媚びに終始せない。矢張り其処には潔さと可笑しさとが在る。然うして其の小粋なる潔さと、悪どき──或いは狂気の──ユウモアとが、名状しがたき不穏を演出し、究極のラストへと誘なうてをる。日一日、其の時分へと近付いてゆく様を、月の位置が表したるのも非常に面白い。矢張り昂奮してしまふ。

然うして、然うして遣つてきた彼のラスト。
果たして、動き出すキヤメラよ。溢れ出すマシンガンよ。然うして女の許へは終ぞ還らず、独り道端でくたばる結末よ。嗚呼、カタルシス。最早や此のうへ無し。
潔く、可笑しく、其の果てに迎へた絶頂のザマ。昂奮全く収まらぬ。