さうすぽー

ソナチネのさうすぽーのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
5.0
自己満足点 97点

250本目の投稿です!

記念としてオールタイムベストの1本を上げました!


北野武、4本目。

ビートたけしと北野武、
お笑い芸人と映画監督、
同一人物ですが、顔は別人のように違うとも言われてますね。

無理も無いと思います。
お笑い芸人として数々の有名なギャグを生み出しながらも、映画監督として"狂気"と"美"、"静と動"のコントラストを持つ芸術的な作品を作るので。

しかし、この映画はそのコメディアンとしてのユーモアセンスを含めながらも"美"と"狂気"さを出していると思うので、それが今作を北野武の最高傑作と言われてる理由だと考えています。

自分もそう思います。


自分はアウトレイジを観たあとにこの映画を観たのですが、観たあとの衝撃は凄まじいものでした。
それこそ、真っ黒に焦げるくらい目に焼き付かれました!


「この映画は異常だ」と思ったのが、
冒頭のクレーン車に男が吊るされて水に長時間入れられるシーン。
それを長々と映す所が登場人物達の冷酷さと残酷さを感じて怖いです。

もっとヤバいと思ったのが、バーでの銃撃戦です!
普通の銃撃戦では敵が襲ってくることで銃撃戦が始まるので、「あ、ここで始まるんだ!」大抵は身構える事が出来ます。
素晴らしい銃撃戦を撮った「ヒート」ですらそうです。

でもこのソナチネは違います。予兆すら与えられません!
武達が入ってきた時に既にいた奴等が敵なのにじっと見てるだけ。その後入ってきたもう一グループは関係無いのに会話シーンを映して武がじっと見てるのに、バーテンがビールを出した瞬間、突然銃撃戦が始まるという!
この場面は未だにビックリするんですよ(笑)解ってるはずなのに。
本当に、本当に演出が上手いです!


このように、この映画は「登場人物がいつ殺されるかわからない」という恐ろしさがあります。
そして、「死」が呆気ないです。
その呆気なさに、人間が簡単に死んでしまうという"恐ろしさ"と"無情さ"、そして"切なさ"を感じます。


かと思えば今度は沖縄の綺麗な海の情景と共にヤクザ達が戯れる展開が長々と描かれます。
何もやることが無くなってしまって途方に暮れていて遊ぶことしか無くなるという所、今のコロナ騒動の中でそういった方たちがもしかしたらいるかも知れません。


今作の武の役柄についてですが、
「その男、凶暴につき」では怖いもの知らずの狂犬という感じでしたが、今作は死ぬ事を全く怖がらない人物と初めは思いますが、実際には武の死生観に基づいて描かれているキャラクターのように思えます。

劇中の行動は主に2つの台詞に基づいています。
「ヤクザ辞めたくなったな...もう疲れたよ」
「あんまり死ぬの怖がってるとな、死にたくなるんだよ」

この数少ない台詞の中で人物像が思い浮かべてしまうのは凄いです。


また、もうひとつ語らないといけないのは久石譲の音楽!
たけし映画の音楽の中で最高傑作と思ってる人は多いと思いますが、自分もその一人です!
特にメインテーマを聴いてると自分は緊張が走るんです。
久石譲の中で最もクールで殺伐としており、他の作品で感じられるメロディアスな曲調とは結構かけ離れています。それでいて哀愁すら漂っている所が見事に映画の的を射ているので、もう「お見事!」としか言いようが無いです!


他にも役者陣や撮影、音響等、色々と語ることがあるのですが、既に文章が長くなっているのでこの辺で割愛します。

自分はノワール映画やギャング映画が好きです。
多くの作品の中でも「特別な作品」と呼べるのは他にもありますが、それでもこの映画はその一つに入ります。
この映画はヤクザ映画でありながら、スリラー映画でもあって群像劇でもあります。そのどれもが素晴らしくて好きです!

邦画が嫌いという方でもこの映画は是非観てほしいです!