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ジョン・レノン,ニューヨークのtjZeroのレビュー・感想・評価

4.2
レノンが'71年にN.Y.に来てからの約10年間を描くドキュメンタリー。

時はヴェトナム戦争の只中。
彼の反戦運動への影響力の大きさを脅威に感じたニクソン政府からの嫌がらせには胸が苦しくなる。

国外追放を画策したり、FBIに盗聴させたり…といった驚きの事実を見せられると、やっぱりJFKのように”その筋”から命を狙われたんじゃないかという疑念が拭えなくなってしまう。

法廷闘争やメディアからの中傷に打ちのめされたジョンは、ひとり西海岸へ。

そこから数年して愛する紐育に戻ったものの、まだ心身はどん底だった彼を、マジソン・スクエア・ガーデンの観客が10分間のスタンディング・オベーションで迎える…もちろん、ステージに招き入れたエルトン・ジョンも。ここはホントに、感動的なエピソード。

愛妻ヨーコとの絆も再確認。新たに産まれた息子の子育てを通して、徐々に立ち直っていくジョン。
このドキュメンタリーを観ると、遺作をレコーディングした際の彼が、いかにヘルシーで意欲的だったのかがよく伝わってくる。

それだけに、その後、どれだけの傑作が生まれたかと思うと…つくづく悲しい。凶弾を放った犯人は、ピラミッドや万里の長城といった巨大な文化財を破壊したに等しい。

最後に最も印象的だったシーンを。
FMのDJから、同じようにいわれなき言いがかりでアメリカを追放されたチャップリンについて訊かれたジョンの言葉…
「60歳になってやっと戻れて、”イエスタデイ”で盾をもらうなんてまっぴらだね…あれはポールの曲だし」
…ジョークまじりに語ってはいたけど、彼の心情が伝わる肉声でした。
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