踊る猫

ラースと、その彼女の踊る猫のレビュー・感想・評価

ラースと、その彼女(2007年製作の映画)
4.0
「イタい人を見世物にしている映画じゃないかなあ……」というような序盤の印象が、少しずつこちらの心を動かすものとなって来たのは言うまでもなくライアン・ゴズリングを始めとする俳優陣の演技の賜物だろう(眉ひとつ動かすだけでこちらの心を捉える彼の演技は実に見事だ)。メッセージは至ってシンプルで、「人の内の子ども(インナーチャイルド)が大人としてどう成長を遂げるか」ということと「病は治すものではなくて共存して行くべきもの」ということが重なり合っている(あとは、現代人は多かれ少なかれ病的であるという、陳腐と言えば陳腐なメッセージも)。最初は本当に魅力がなかったビアンカが、徐々にリアルな女性らしい表情を浮かべているように見えて来るあたりも制作者たちの工夫の産物だと思う。日本の文脈に置き換えて考えると「オタク」がどう現実と向き合うかという話とも重なって来るのかもしれない。善人ばかりの映画が苦手、という方にはお薦めしかねる。私も本当ならそういう人間なのだけれど……。
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