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チェンジリングのHKのレビュー・感想・評価

チェンジリング(2008年製作の映画)
3.9
1920年代に実際にあった「ゴードン・ノースコット事件」を題材にしたサスペンス映画。監督は「ミリオンダラーベイビー」「ミスティックリバー」など、数々の名作を手掛けるクリント・イーストウッド。

自分の息子が行方不明。警察の捜索で無事に還ってきた子供は全く知らない子供であった。事情が違うと警察に説明するも、自分の子供も分からないお前がおかしいと相手にされず、相手にされたかと思えば、精神科医を付けられ、証人を呼ぶと精神病院にぶち込まれた。

不正に溢れた警察の犠牲となり不条理な仕打ちを受けるアンジェリーナジョリー。実際に起った大量誘拐殺人事件と絡めて、事態はさらにとんでもない方向に進展していく。果たしてアンジェは子供に会えるのか。

クリントイーストウッドもなんというか、一応商業主義に乗っ取って様々な映画を毎年この頃作ってましたね。あれだけ年を取っておりながら監督としてもしっかりとしたエンタメ映画をあれだけ作れることには素直に感心します。僕もイーストウッドは2000年代以降の作品は大好きです。

実際に起った事件ながら、ここまで内部が腐敗しきってミスを認めることができない様子、さらに精神病院との癒着っぷりを見てみると、殺人鬼よりこいつらの方が狂っているのではないかと素直に虫唾が走ります。

それと同時に、この日本でも公権力が間違った判断をしてしまったときに民衆がああやってデモを起こすのかというと疑問を抱いてしまいますね。映画の後半で事件の真相が判明し、汚職警察を糾弾するためにあれだけのデモが起こるのはアメリカだからなのでしょうか。

「アンタッチャブル」という映画でもそうですけど、1920年代ってアルカポネとかのマフィアやギャングの方がクスリで儲けて、警察でも取り押さえができないくらいになってしまいましたからね。上層部が完全に腐敗しきってしまうとこうなってしまうのでしょう。所詮は同じ人間で完全なパワーゲームなのですね。

この映画においては、アンタッチャブルのショーンコネリーみたいなタイプの人間は警察におらんかったわけで、最後は本当は殺していないにもかかわらず全ての殺人を殺人鬼とはいえ全てあのゴードンに擦り付けるようにことを済ませてしまうところは不条理に感じましたね。彼を擁護するつもりはないけど、どれだけの人間が助かっているかは正確には分からないわけですからそこの追求を警察が怠っているのはやはり今の時代に見ても怒りを覚えます。

公権力が腐敗してしまうことほど恐ろしいことはない。殺人鬼が処刑されるシーンも同情を誘うつもりはないにしても哀れに感じてしまったのは私だけでしょうか。

善悪二元論のみならず、腐敗した正義をも糾弾するのはやはりイーストウッドの本領と言いますか、かつての自分に対する一種のアンチテーゼなのか。そのような彼の心情もひしひしと伝わる作品です。ただしちょっと演技指導がエモいのがドラマ的でちょっと残念。

相変わらずアンジェリーナジョリーは顔が濃いっすね。本当に濃いっすね。顔がきついと言いますか、ちょっとばかり近寄りがたい雰囲気醸し出しますね。

いずれにせよ面白かったです。
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