tjZero

チェンジリングのtjZeroのレビュー・感想・評価

チェンジリング(2008年製作の映画)
4.2
1920年代のL.A.、シングルマザーのクリスティンの息子が行方不明になる。
5カ月後に戻ってきた彼は、別人だった…。

本作に限らず、クリント・イーストウッド監督・主演作の多くの女性キャラは酷い目に遭います。

犯されそうになったり(『アウトロー』、『ガントレット』、『ダーティハリー4』、『ペイルライダー』)、顔をズタズタにされたり(『許されざる者』)、不倫相手の大統領に殺されたり(『目撃』)と、まさにやられ放題。イーストウッドってサドっ気があるんじゃないかと疑いたくなります。

’8~90年代までのイーストウッド映画は、そんな風に悲惨な目に遭う女性たちを、マッチョなオレ(クリント)が救ってやる…っていうパターンが大半でした。

そんな時期に主にヒロインを演じていたのが、ソンドラ・ロック(私生活でもイーストウッドのパートナーでした)。
か細い身体、オドオドした目つき、はかなげな雰囲気…という、いかにも男性の庇護を必要とするような、か弱いイメージの女優さんでした。

そんなヒロイン像も、90年代の後半から21世紀に入ってからは『マディソン郡の橋』のメリル・ストリープ、『ミリオンダラー・ベイビー』のヒラリー・スワンク、そして本作のアンジェリーナ・ジョリー…というように強くて自立したイメージに変化していきます。

これはイーストウッド自身がマッチョなヒーローを演じられなくなってきた…という肉体的な要因もあろうとは思いますが、それよりも、孤高の男が悪を根絶する…という設定にリアリティを感じられなくなった(&女性の権利尊重の)時代の趨勢に合わせて変化していったという側面が大きいと思います。

頑固な部分を残しながらも、変化を怖れず、進化を重ね、円熟味を増していったからこそ、イーストウッドは90歳になろうとする現在でも、第一線で活躍出来ているのでしょう。
tjZero

tjZero