ばーとん

東風のばーとんのレビュー・感想・評価

東風(1969年製作の映画)
1.5
ジガ・ヴェルドフ名義の政治モノだけど、この映画は少々事情が複雑。
ゴダールがどこまで指揮を執っていたのか知る由もないがピエール・ゴランがフランスやらイタリアやらブラジルから引っ張ってきた名だたる左翼連中と共同監督した東風を、純然たるゴダール映画と呼ぶにはさすがに無理があると思う。
ゴダールは政治の人であると同時に徹頭徹尾、映像の人なので
他のゴダール作品に比べて東風の突出して映画的でない映像を見るにつけやはりこれは異形の作品だと言わざるを得ない。

ゴダールやゴランは映画を階級闘争の武器にすること、思想の道具にすることに躍起なんだけれど、それって勿論ハリウッドがずっと昔からやってきてることで、アメリカ人はアメリカ製の民主主義を世界にアピールするために映画を道具にしてきた。
しかも極上のエンタメとして非常に巧妙に。
ゴダールは映画における思想闘争でハリウッドに惨敗したんだよ。
敗北したゴダールは「右側に気をつけろ」の頃には彼岸の人となってしまう。
その時代の作品も夢の跡って感じがして儚くて美しくて好きなんだけど。
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