ばーとん

パッションのばーとんのレビュー・感想・評価

パッション(1982年製作の映画)
3.3
映画撮影の難しさ、男女のディスコミュニケーション、労働と愛の相似が語られる。恋愛の本質は労働に似た搾取構造だという指摘は、最近注目を集めている言説だが(資本家が労働者にするように、女性が性的資本によって男性から搾取する)1982年にゴダールはそこまで喝破していたのだろうか。ワイダの「大理石の男」で労働者のヒーローとして持ち上げられたイェジー・ラジヴィオヴィッチを監督役としてわざわざ抜擢してる。映画だって労働なんだ、役者もスタッフも労働者だ、てめえら働け働けと、やたら怒鳴り散らすイエジー。映画撮影自体が労働搾取だというゴダール節。

予算が尽きて映画続行が難しいので、みんなでポーランドへ向かうという、変テコなラスト。フィクションよりもリアルタイムの闘争やろうってことか。「映画なんかやめて現実みようぜ」みたいなこと、この人よくやるよね。日本でも庵野秀明が真似したけど。ゴダールは政治的ミーハーなので、世界の耳目を集める政変をしょっちゅうテーマにするし、もうちょとだけ長生きしてウクライナの映画でも撮って欲しかった。
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