風に立つライオン

ニキータの風に立つライオンのレビュー・感想・評価

ニキータ(1990年製作の映画)
3.8
 「グラン・ブルー」に続くリュック・ベッソン監督の1990年の作品であるが、ただのアクション映画ではない。
 彼のテイストはダイナミックでありつつシャープでキレがあると感じている。
 そしてフランス政府の諜報機関に奴隷的に雇われたニキータ(アンヌ・パリロー:当時の監督の妻)の堅気の恋人との切ない恋心と過酷な任務との狭間で苦しむ姿にペーソスが漂う。

 街の不良で警官殺しの罪で終身刑を言い渡されるが、フランス政府の諜報機関から政府の為に働くか死を選ぶか迫られる。
 止む無く働く事に同意し、訓練が始まる。
 学術、格闘、銃撃、教養、なかでも一流マナーや女性らしさをアマンド(ジャンヌ・モロー)がインストラクターとして教え込む。

 彼女の教えに
 「この世に際限の無いものが二つあるわ。一つは女の美しさともう一つはそれを悪用することよ」   
  
  ウーン深い! 

 数年後担当ボスのボブ(チェッキー・カリョ)が誕生日祝いとして外出しての食事に誘う。
 喜び勇んで二人で高級レストランに行くが、渡されたプレゼントは45マグナム。
 指示通り別席の要人とSPを射殺、教えられた逃走ルートは塞がれていることに唖然とする。
 仕方なく厨房へ逃げ追いかけて来たSP達と大激戦となる。
 要人を射殺するシーンでは彼女の銃を連射する姿だけを映し出し、厨房では放たれた弾丸の視点でタイルが飛び散るなどクールさとダイナミズムがアクションシーンにテンポ良く編み込まれている。

 何とか脱出したニキータはボブに掴みかかるが最終試験だったことを知らされる。
 
 晴れて卒業し外界へ。
 新しく恋人も出来、幸せな第二の人生が始まるが、ジョセフィーヌというコードネームを持つ彼女の元に、容赦ない任務が次々と発せられる、が‥。

 仲間との合同任務で、ミスが起きると当局から掃除人(ジャン・レノ)が派遣される。
 要は情け容赦なく完璧に後始末をする殺し屋だが、このジャン・レノがハマっていて実にいい。
 彼の私生活を描いたのがニキータの続編よろしく「レオン」として登場することになると言っていい。

 ただのアクション映画に留まらず、切なくて哀しさが漂う洒落た作品に仕上げられていると思う。