nina

マイ・プライベート・アイダホのninaのレビュー・感想・評価

4.0
「have a nice day」

久しぶりに難しい映画に出会った気がする。完成されてるし欠点がないような気がするけど、あれこれ難癖つけたくなる。まるで美しい絵画を前にした時の気分。それくらい芸術的だった。

孤児で母と過ごした記憶がうっすら残ってるマイクは、ナルコレプシーという持病を抱え男娼として日々体を売りながら生活している。そんな彼とは正反対に、市長の息子で市長亡き後は莫大な遺産が転がりこんでくるスコッティは、父や家族へのちょっとした反抗心から男娼として溜まり場でたまって仲間と悪さしたりヤクをやったりしている。
この時点で2人の道は全然違ったのに、ある一時同じ道を目指して盗んだバイクで旅してたのが、ほんとにエモーショナルすぎる。
マイクからすれば、一生の思い出であり青春の全て。スコッティからすれば、ひと時の思い出、若かりし頃のイタズラ程度なの、悲しすぎる。
2人で焚き火を眺めながら、マイクが自分の想いをうわ言のように繰り返すシーン、リバーがアドリブで追加したと知り、あまりにもマイクに成りすぎてて素晴らしい俳優魂だなと思った。実際映画を最後まで観て、あのシーンは外せないものになっていたし。

普通を知らなかったマイクは、育った環境から普通を学ぶしかなかった。そこが普通だと思うしかなかった。でも、温かい家族も上流階級の暮らしも普通も知っているスコッティは、なんの未練もなくその世界から出ていけた。マイクは一生出ていけないのに…って、私は完全にマイクに肩入れしてしまい、ひたすら重い作品だった。
何年後かして観た時に、スコッティにももう少し肩入れできたらまた感想が変わるかなぁと思ったり。
とにかく、若き日のリバーフェニックスとキアヌリーブスがひたすら美しかった。この2人が同じ時代に生きていた奇跡に拍手。
nina

nina