つらいよ17作目。名作の誉れ高い作品とのことで劇場鑑賞しました。まおも(©︎マリさん:ま〜ま〜面白いガーエーの意)。
今回のマドンナは芸者のぼたん。水商売なのでどことなくリリーに近い印象を持ちました。
しかし、本作ではぼたん自身を物語らず、物語を物語ったため、ぼたんの人間性が深まりませんでした。これは上手な描き方だと感じました。
リリー3部作はリリーが物語られました。旅をする商売だけでなく、強烈な出会いがじっくり描かれ、母との葛藤場面も描かれました。だからこそ寅さんやとらやのあたたかさに惹かれる根拠が解ってしまい、寅さんとの相性も明確になってしまった。
ぼたんはその前に借金問題というキャッチーな物語を見せたため、ぼたんの苦しさを実存性ではなく借金という具体的な問題に集約できました。おかげでつらいよネバーランドは揺るがされることはなく、ぼたんも印象的なマドンナ程度で収まったのだと感じました。
逆に言えばいかにもなプログラムピクチャーなので、スリルがなくて物足りなかったです。
宇野重吉演じる老人の画家が良かったです。画家が昔の恋人であるおばあちゃんに会う場面は本作のハイライトでした。
おばあちゃんの「どの道を選んでも必ず後悔します」という言葉は沁みました。後悔はするけれど、選んだ道で充足はできている事が伝わる場面でした。この言葉を寅が言ったら、お前何にも選んでねーじゃねーか！と突っ込まれること必至です。
これまでつらいよ観て来ましたが、個人的には節目節目の作品だけでいいな、と思った次第です。まおも。
