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ハンナとその姉妹のtjZeroのレビュー・感想・評価

ハンナとその姉妹(1986年製作の映画)
5.0
ウディ・アレン監督作を好む自分にとって、ベストは常に『カイロの紫のバラ』なのですが、”いろんな人に最も勧めやすいアレン作品”となると、本作の方に軍配が上がるかもしれません。

<理由その①>ウディがいい具合に出ている
A.”アレン監督作は『インテリア』、『カイロ~』、『ミッドナイト・イン・パリ』などの様に本人が主演していない作品が好評価を得ることが多い”。ただし…
B.”ファンとしては彼の出番を観たい”。
このAB両方を満たすには、ウディがちょっとだけ効果的に出演するのが最適なのです。
そういう意味で本作は彼が出番は少ないながらも、印象深く”おいしい”役柄を演じています。例えて言うなら、『未来世紀ブラジル』のデ・ニーロのように飛び道具的なわずかな出番にもかかわらず、見せ場をさらっちゃうような出方があざやか。

<理由その②>その他の豪華なキャスト
ミア・ファーロー、(にその母親の)モーリン・オサリヴァン、マイケル・ケイン、バーバラ・ハーシー、マックス・フォン・シドーにキャリー・フィッシャーという多彩な顔ぶれが彩る人間模様が魅力。
中でも特にダイアン・ウィーストは、アレンとの相性がピッタリ。ダイアン・キートン程とんがっていないし、M・ファーローほど弱々しくもない…ウディとホントに対等なナイスなカップルぶり。
本作でもまるで趣味が合わないのに、なぜか相性抜群な、両者の不思議な化学反応ぶりが見どころのひとつ。

<理由その③>コンパクトなのに広がりのある語り口
物語はニューヨークに暮らすいろんな人々の生きざまを、短編小説を積み重ねるように味あわせてくれます。
その短いエピソードがだんだん絡まっていく終盤までの構成が見事です。
観終わって残るのは、どんな風に生きてもいいんだ、という晴れ晴れとした思い。それは”なんでもあり”というような圧倒的な肯定感が特徴のわが国の落語に通じる機微でもあります。ホッと和みながら、アレン映画には珍しいストレートなハッピーエンドにひたる事が出来るのです。
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