踊る猫

フォレスト・ガンプ/一期一会の踊る猫のレビュー・感想・評価

4.5
単純な人生讃歌のようにも受け取れる……だが、私はもっと深く読んでしまいたくなる。ボロボロの靴を映したショットなどひとつひとつから立ち昇るフォレストのキャラクターは、自分を取り繕わず嘘を吐くことのできない「気は優しくて力持ち」的なものだ(今の目で見れば発達障害の疑いを指摘することもできなくもないだろう)。そんな彼が辿る数奇というか奇想天外な人生は語り口においてフェイクとリアルが絶妙なブレンドで配合され、スットコドッコイな中に生々しさを感じさせるものとなっている。フォレストをめぐる運命はベトナム戦争を覗けばのどかなものが目立つが(いや、ベトナムの惨禍でさえ彼にかかるとまろやかになる?)、そののどかさとアメリカが負わなければならなかった様々な傷のギャップが巧いと思った(暗殺や暗殺未遂をめぐるニュースが目立つことに留意したい)。人生は運命に翻弄されながら、なにを体験するかわからないがままに生きなければならないのか。定められた運命に従って真面目に生きなければならないのか。その両者の考え方の間で誠実に佇むトム・ハンクスの姿が忘れられない。
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