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ザ・キープのHKのレビュー・感想・評価

ザ・キープ(1983年製作の映画)
3.3
第二次大戦中、ルーマニアの城塞でドイツ軍が古代の魔物ラサロムの封印を解いてしまい、ドイツ兵が次々と無残な姿に。同じころ長い眠りから覚めた謎の男グレーケンがその城塞に向かい、太古から続く善と悪の時空を超えた壮絶な戦いが始まる!
・・・という上下2巻の壮大な原作小説が96分のB級ホラーと化してしまった作品です。

原作のF・ポール・ウィルソンは大好きな作家で翻訳された本はたいがい読んでます。
本作を含む複数の原作が相互に関連した世界のアドバーサリーサイクルはとても面白いんですが、日本での人気はイマイチなのか、欠かさず読んでた「始末屋ジャック」シリーズも、もう10年以上続刊が翻訳されていません。オ~イ、誰かなんとかしてくれ~!

映画化された本作はあまりに評判が悪かったため今までスルーしてましたが、最近リメイクの噂を聞きつけたのと、ちょうどCSで放送してたのを機に録画鑑賞。
監督は『ヒート』や『インサイダー』のアンソニー・マン。キャストは『ライト・スタッフ』の頃のスコット・グレン、『U・ボート』の頃のユルゲン・プロホノフ、まだ老人ではない頃(40代)のイアン・マッケラン、デビュー間もないガブリエル・バーンと渋い面々。

散々酷いと聞いてましたが、観てみるとこれがなかなかどうして。
不気味な城塞とドイツ軍がダークな雰囲気を醸し出しており序盤は良いムード。
音楽はタンジェリン・ドリーム。
ところが、原作に出てきた覚えのない筋肉剥き出しモンスターの出現あたりからだんだんと雲行きが怪しくなってきます。

SFXの光学処理がまるで昔の戦隊モノのレベル。しかも時間と共に酷くなっていくような。
Wikiによると視覚効果のスーパーバイザーが撮影途中で亡くなったため、マン監督自身が特殊効果を仕上げるしかなかったのだとか。
この辺から映画は“ザ・キープ”というよりは“ザ・チープ”になっていきます 。

さらに、ネットで調べると実はマン監督のディレクターズカットは当初210分もあったらしく、それがパラマウントの指示により96分にカットされてしまったとのこと。
どうりで説明は不十分、伏線は未回収、もはや物語は破綻気味。
原作者も本作が原作とあまりに違うため激怒してDVD化を許可しなかったとか。

そんなこんなでカルト化してしまった本作ですが、どうせリメイクするなら、いっそのことアドバーサリーサイクルを丸ごとシリーズ化して本格的に映画化してほしいものです。
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