森田芳光監督特集第9作目
夏目漱石前期三部作の一つ「それから」を森田芳光が映画化。主演は松田優作、小林薫、藤谷美和子などなど
夏目漱石という非常に格調高い日本の文豪の作品の実写化なのであまり言いにくいが、今のところ森田監督作品の中で一番つまらなかったです。
邦画って訳のわからない独特の間を作ってしまうことがあるけど、この映画はその典型。森田監督はその間にとんでもないぶっ飛んだギミックを入れることで映画に味を出すところがいいのに、この映画ではほんのちょっとしか出さず、終盤に至ってはとにかく退屈な間になってしまい眠くなってしまった。
個人的には、森田的ギミックをもうちょっとほしかった。せいぜい鉄道内で花火をしたり、ロシア語を唐突に喋ったりするシーンはまあ面白かった。そして、全員が真顔で棒立ちになるシーンも漫画的な絵にはなっていていかにも森田演出という部分は感じました。
しかし、残念なことに物語の推進力がそんなにない、松田優作の渋い演技などは全然光っていませんでした。終盤の長い告白シーンもあそこで格調高くするために、敢えてああいう何も付け加えない撮り方になったのかもしれませんが、ちょっと自然な部分がなくなってしまいましたね。
でも自然な演技になると、森田監督らしいぶっ飛び演出ができなくなるから致し方なかったのかもしれません。大河ドラマとかで俳優の重厚な演技とかを見るのが好きな方だったら分かるかもしれませんね。
夏目漱石の映像化作品で個人的にお勧めなのは青い文学シリーズのこころです。やっぱりああいう情欲に任せるような不貞を格調高く演出するのは困難なもので、戯画化するくらいならいっそアニメにしたほうが得だったりします。なんたって物語の起伏はほとんどないのですからね。30分くらいのアニメにまとめたほうが手っ取り早い。
この映画は森田映画の中でも比較的に長いため、余計視聴するのが疲れた。そんな作品である。