ばーとん

ぼんちのばーとんのレビュー・感想・評価

ぼんち(1960年製作の映画)
5.0
商売には口出しできないが、家内のことは一切合切取り仕切る、現代版大奥のような趣。毛利菊枝と山田五十鈴のコンビのえげつなさがたまらない。美しく、艶やかで、甲斐甲斐しいが、計算高く、したたかで、時に下劣な苛めもする、女達の二面性をこれでもかと見せつけてくる。空襲で焼け出されて感傷に浸る間もなく、ぞろぞろ女たちが集まってくるあたりのシュールなセンスにぞくぞくする。寺での入浴シーンは、女好きがみるとエロティックなシーンだろうが、女嫌いが見るとただのホラー。女という生き物の不可解さを男目線でこれほど妖艶かつグロテスクに描き出したのは見事。女のこうした能動的で動物的な側面は、溝口や成瀬が絶対に描けなかった部分で、市川崑の視点は彼らを超えて繊細、はたまたユニークかつ現代的だ。歪つな構図と品を欠いたカメラワークも最高。文句なく傑作。
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