ひゅうどんこ

ぼんちのひゅうどんこのレビュー・感想・評価

ぼんち(1960年製作の映画)
3.8
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 山崎豊子の小説を下地にはしていますが、完全な別物と考えた方がいいでしょう。何しろ、撮影中から「こんなの私の書いたぼんちじゃない😡」と猛抗議してたそうですから。

 作家の主張や自分語りを嫌い、娯楽性を重視した市川崑が、脚本家として絶大な信頼をおく由美子夫人(=和田夏十)と共同で台本を書くという定番の中でも、一番そのらしさが出ている作品かもしれません。
 
 大阪船場の繊維業と、それに携わる大店のぼんぼんとの二軸の栄枯盛衰を描いてますが、商いの方はさわり程度、ぼんぼんのおさわりがメインになってます😳。ただし、性描写には踏み込まないことで有名な市川作品ですから、終盤のお色気シーンにいたってもさらりとしてるんですね。
市川監督自身、兵役免除で出征経験がないためか、戦時中のシーンもさらっとしたもんです。

 ある調査によれば、現在世界には創業100年以上の企業が6万数千社あるそうで、その内日本の約2万5千社が最多だそうです。そんな老舗大国日本。近代には東洋のマンチェスターとまで言われ栄華を誇った大阪の中でも、五綿八社をはじめ、老舗の大店ひしめく船場の問屋街にあっては、遊びのお金も使い放題だったことでしょう。
支那事変~終戦、景気は上げ下げしながら朝鮮特需で絶頂期を迎えます。
その反動も大きく、業界はほどなくして冷え込むことになり、沖縄返還のために政府は日米繊維交渉という自由化のカードを切らざるを得なくなり、組織の縮小や業界再編が一層加速します。そのあたりを押さえておけば、作品の背景が分かりやすいでしょう。

 原作ファンにはお叱り受けるかもしれませんが、大衆としては映像作品として楽しめれば、ぼんぼんだろうがぼんちだろうがどっちでもいいことで、原作者の山崎さんにはそれが我慢出来なかったんでしょうね。