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ぐるりのこと。のsoのレビュー・感想・評価

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)
4.0
人は一人では生きていけないもの
だが、逆に言えば一人でなければ何とか生きていけるものだ。
という小さくとも確かな光で、悲しき生を全うしなければならない私たちの行先をほのかにてらしてくれる映画だ。

現代社会において、人々は助け合うよりもむしろおとしめ合いながら生きている。
こんな時代には、優しい人ほど傷つき苦しむ運命にあるのかもしれない。
そんな優しい人にとってただ隣で「大丈夫だ」と言ってくれる人の存在は、何て大きく、何て尊いのだろう。

この映画で「大丈夫だ」と恋人に囁くのは、法廷画家として犯罪者を描く男だ。
一見さえない彼だが、「人の心はわからん」と言いながらも、そのわからなさを手放さずに、それでもなお心を見つめようとする。
そんな彼の目線こそが、否が応でも人と人が交じり合いながら生きていかねばならない世の中で必要とされる本当の優しさといえるのではないだろうか。

とにかく拍手を送りたくなる木村多江、リリーフランキーの名演。
およそ10年前公開時に劇場で観て以来の再観だが、主人公と同年代に突入した現在の自分には、以前わからなかった二人の内面の喜怒哀楽がより鮮明に感じられ、とても涙なしには観ていられなかった。また10年後に観たら、今汲み取りきることのできなかった二人の小さな感情の機微にも気がつけるだろうか。
間違いなく好きな邦画ベスト5に入る、すばらしい映画。
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