サッカーと映画観るのがすき

es [エス]のサッカーと映画観るのがすきのレビュー・感想・評価

es [エス](2001年製作の映画)
3.5
ずっと観たいと思ってたんだが、どこの動画サブスクにもないしなかなか観れずにいたんだが、暇つぶしにたまたま寄った近所のBookOffでDVDを発見。それにしても月額1,000円程で見放題のご時世に中古DVD1枚を980円で買うのはなんだか損した気分だ。まぁ観たかったから許すw

心理学における「エス(es)」とは、本能的な欲求や生理的衝動を指す言葉で、「エス」と真逆にあるのが「超自我」で「道徳的、命令規範的」な心の状態を指す、だそうです。
なるほどタイトルの意味は理解した。ですけど果たしてこの映画で描かれた、またスタンフォード大での実験で起こった事象・事件が「本能的な欲求や生理的衝動」かというとなんかちょっと違う気もするかな。真逆の価値観に「道徳的、命令規範的」があるのはなんとなくわかるけど。
本作を見る限り、ある数人の被験者について日々の生活環境で鬱積したストレス・不満を実験で与えられた立場・権限によって暴力的に発散する事象が起きたのであって、それは人間の本能というより環境によって作られた人間個々の抱える闇みたいなものによるものじゃないかと感じた。
ようするに、たまたまこの実験の参加者にかなり屈折した犯罪者予備軍がいたのであって、同じ条件下でも誰もがそうなってしまうものではないんではないかと。実際、暴走する被験者を静止しようとする人もいたわけで。
とはいえ、その日々の生活環境が多くの人にとってストレスフルな状況であれば、きっかけ次第で集団で暴徒化してしまうのも人間の性というのはわかる。権力側の人間だったとしても、いつ身内に殺されるか、市民が反乱起こすか、みたいな危機感で日常的にストレスフルな状況にあるからこそ、他者に対して暴力・残虐性が増長するもんなのかもしれない。

何にしても、こんなの観たり・考えたりしてると、人間って本能で生きている動物よりホントに優れているんだろうか、環境・条件次第で見境なく殺し合う狂った生き物なんかな、とか堂々めぐりなこと思ったりする。

本作観たのはちょっと前だったんだが今更レビュー書いとこうと思ったのは、先日「ビヨンド・ユートピア 脱北」を観たからでもあったりする。感想はそっちで書こうと思うが、短期間の実験ではなく彼の国に生まれてしまったばかりに生涯監獄のような環境で生きなくてはならならい人々がこの世界にいるんですよね…