滝和也

眠狂四郎 殺法帖の滝和也のレビュー・感想・評価

眠狂四郎 殺法帖(1963年製作の映画)
3.7
俺の剣が完全に
円を描く前に
お前は死ぬ…

眠狂四郎の円月殺法か
陳孫の少林寺拳法か

加賀百万石の命運を
賭けた争いの行方は?

「眠狂四郎 殺法帖」

市川雷蔵主演、眠狂四郎シリーズ第一弾。大映が送り出した市川雷蔵の当り役、柴田錬三郎原作の眠狂四郎。転びバテレンの子として生まれた故の、ニヒルな虚無に生きるキャラクターがピタリとハマり、シリーズ化されています。

狂四郎を襲う伊賀者の影。陳孫と名乗る怪僧からの呼び出し。そして知世と言う奥女中からの警護の依頼。時同じくして無頼の身である凄腕の浪人、眠狂四郎の元へ集う輩達。それは加賀百万石を揺るがす事件へと彼を誘う…。碧玉の仏像に隠された謎、加賀宰相の間者であった知世との関係、そして狂四郎をつけ狙う陳孫との勝負。全てが絡み合いながら舞台は加賀の國へと移る…。

転びバテレンの子と言う背景故の狂四郎の虚無感と言う背景は色濃く語られず、加賀百万石の陰謀に巻き込まれながら、戦う無頼の剣士と言う、よく言う剣豪モノかつお宝の争奪戦モノとしてエンターテイメントに徹した作品となっています。

どうしても僕の世代だと田村正和の無口かつ妖艶な眠狂四郎のイメージが強く、ジメジメした感触があるのですが…こちらは無頼かつ豪放磊落なイメージすらあります。処作故の万人受けを狙った作りなのかもしれないですね。

無論、眠狂四郎の吐く台詞や態度はどこか虚無的で世の中に対し斜に構えておりその背景からのキャラクター造形はなされており、ニヒルなイメージはありますし、只の正義の味方ではない姿を魅せてくれます。後半の自らの生まれと似た知世に対して生まれる感情がある種ギャップとしてキャラクターをより際立たせています。またそのラストの寂寥感はただの剣豪モノでない作品の色を見せてくれています。

また今作のライバルキャラ、少林寺拳法の使い手、敵の用心棒陳孫との関係は正にライバルキャラの基本を行く良さ。時に共闘し、最後は戦うと言う展開。何よりも演じているのは若き若山富三郎。まだ城健三郎名義時代。中々富三郎の拳法アクションは見れないですからね。ラスト含め、魅力的なキャラでした。

運命に導かれる謎の女知世に中村玉緒。若さ溢れる艶のある演技が素晴らしいです。勿論可愛さもです(^^)後の義理の兄富三郎との共演ですね。

円月殺法の秘剣を使うニヒルな剣士眠狂四郎の顔見せ興行と言った所でしょうか。ただ市川雷蔵のカッコ良さは間違いなく感じられましたから、シリーズ少しづつでも追っていきたいですね(^^)。全12作と先は長いですが…(笑)
滝和也

滝和也