KANA

鞄を持った女のKANAのレビュー・感想・評価

鞄を持った女(1961年製作の映画)
3.6
全盛期のCCのコケティッシュな魅力を堪能できる作品。

表面的な内容は青臭いソープオペラみたいな感もあるけど、場面場面の撮り方・演出が本当に芸術的でロマンチック。
内気で感受性の強い十代の青年を演じるジャック・ペランの演技が瑞々しくて切なくて秀逸で…
CCはあんなにグラマラスで奔放で野性味溢れてる一方、ペランはお金持ちのお坊ちゃんで初々しくてどうしたって釣り合わなそうなのに、その危うくてアンバランスな距離感がちょっとした快感に変わって見入ってしまった。
終始切なさを秘めたロレンツォ目線っていうのもいいんだろうなぁ。

アイーダがお風呂から出て、オペラを流してるロレンツォの元へウキウキしながら少女のように階段を降りてくるシーンと
クライマックスの浜辺の長回しのラブシーンがとても印象的で忘れられない。
全体としては起伏の少ない気怠いムードだけど、2人の孤独感を表す描写がとても巧くて、これらの名シーンはある意味ドラマチックだと思う。
そして極めつけはそれまでの甘美さを裏切るような、皮肉な結末。
なるほど…ズルリーニ監督、素晴らしい。

ジャック・ペランといえば『ロシュフォールの恋人たち』の爽やかcuteな水兵さんとか『ニューシネマパラダイス』の大人になった主人公とかの印象が強いけど、本作でブレイクしたことはこの度初めて知った。
今も昔も端正なルックス。

CCの挑発的な美貌といいどこか荒涼としたパルマの夏の風景といい浜辺のシーンといい、これは是非カラーで観たかった〜!
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