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ラザレスク氏の最期のArxのレビュー・感想・評価

ラザレスク氏の最期(2005年製作の映画)
3.6
妻と離婚し一人暮らしをしているラザレスク氏(重度のアル中)が体調を崩し救急車を呼ぶが病院をひたすらたらい回しにされる。ラザレスク氏は次第に失禁したり意識が朦朧としていくのだがこの映画がすごいのは人が死にかけている状況なのに病院の人間に緊迫感が全く無いところだ。最初の病院では患者がいる前で救急隊員と医者がなんでこいつ連れてきた?と言い合いするところは医療業界のヒエラルキーを見せつつ、自分が患者の立場だったら悪夢かと思うだろう。

そう、これは真綿で首を絞められる様な悪夢を淡々と見せてくれる。淡々としすぎて逆に面白みが出てくるというかある種のブラックコメディですらある。(病院間を移送する救急車内のシーンは丸々カットしてもシナリオ上さほど支障はほぼ無いのだが、あの時間があることで観客もラザレスク氏と一から十まで付き合わされることとなり「一夜の悪夢」感が強調される。)

とにかくこの映画、殆どの登場人物が諦めているというか、社会システムが終わってるから自分に出来ることなんて無いでしょという気持ちが出まくっていて、将来に何も期待できない国に住んでいる市井の人の姿がありありと映し出されている。我が国はもう少し良心が残っていると信じたいが。
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