このレビューはネタバレを含みます
ユダヤ人俳優がヒトラーに演説を指導するなんてトンデモな状況が相当変なんだけど、そういった状況をユダヤ人の悲哀として哀しくも滑稽に描いたコメディ作品なんだよね。加えて自信喪失したヒトラーがまた滑稽なんだわ。ヒトラー役のヘルゲ・シュナイダーはあんまり実物には似てないけど、でもこの作品では妙に威厳のない風貌が良い感じではある。
展開はゲッペルスがヒトラー暗殺を画策していたという、これもまた妙なことに。そしてラストはチャップリンの「独裁者」を意識したのかも知れないけど、ずいぶん強引な方向に持っていった感じ。それはそれとして、ヒトラーのパレードコースは爆撃跡をセットの書き割りで隠すとか、ナチスが作り出したニセモノの栄光に皮肉を込めているところは面白い。今のドイツがあの時代振り返り、ヒトラーを笑いの対象として等身大のオッサン(むしろ共感的)に描いているところも興味深いね。