茶一郎

トレインスポッティングの茶一郎のレビュー・感想・評価

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
3.9
『良ヤク 口に苦し』

 人生の夏休みとされる大学生、若者は『やらなければいけないこと』を強要されると、しばしばその若さを武器にして『今しかない』『今を楽しみたい』など『今』を強調します。一方で、フタを開けてみると中途半端にやるべきことを渋々やっているのが現状です。

 さて、『引用の織物』というのは、映画に限らず芸術は全ての過去の作品の引用であり、現代芸術にオリジナリティはないとする考えです。1895年リュミエール兄弟が『シネマトグラフ』を開発したのが『映画』だとすると今作の監督ダニー・ボイルはその100年後に映画作家デビューした監督です。同世代の監督はタランティーノ、フィンチャーなど、これらの作家が『引用の織物』にどう立ち向かったか。それは、いかに古く描かれた題材を現代的にアップデートするか、ということだと思います。特に、ダニー・ボイル氏の以後の作品でののデジタル撮影と作品とを繋ぎ合わせた功績は偉大なものだと認識しております。

 今作は破天荒、危険だが楽しい生き方の勢いとその消沈。若者ヘロイン版「グッロフェローズ」をポップな編集と現代的なオサレな画で93分を見せ切ります。
そのストーリーは国自体が過去にトラウマを背負っているスコットランドの若者が自分で人生を選ぶ物語と言える。

 終盤までの一般常識と良識にとらわれない若者の生き方が、自分のようなボンクラ大学生のハートを掴んで離さないのです。
しかし、ラストに主人公が今に向き合って人生を選択するように、連続する『今』に向き合わないといけないですなあ(自戒)
茶一郎

茶一郎