うっちー

ワンドゥギのうっちーのレビュー・感想・評価

ワンドゥギ(2011年製作の映画)
3.7
妙なタイトル。ユ・アインもユンスク兄も好きなので鑑賞。で、最高でした! なんだろう、この懐かしくも温かい雰囲気。下町の悲しみと喜びとおかしみが詰まっている。

場末のキャバレーでダンサーをしている父とのふたり暮らしの高校生、ワンドゥク。貧乏かつ、留守がちな父の代わりに自分の身の周りのことをしたりと、高校生らしい楽しみに縁遠い毎日を送っていたが、キム・ユンスク扮する担任教師との関わるようになってから、家族について、自分のやりたいことを見つけること、そして生きる上で大事なことなどに気づき、成長していく、というストーリー。青春映画であり、家族ドラマ、人間ドラマである。貧困や外国人労働者、そして宗教や教育の問題など、社会的な問題を背景に配しながらも重くなりすぎないのがまた良い。

教師を演じるユンスクが、やはり頭抜けて上手い。いつもの、常にキレ気味の粗暴で、建前なしの高校教師。でも信仰心に厚く、なによりワンドゥクの境遇を思い、気にかけている。さりげないおせっかいと他愛ない喧嘩ごしのやりとりがホントに楽しい。こっちの方がずっと普通だけど、『チェイサー』のデリヘル親父役に近いかも。怠いようでいて、これという時の走り方や蹴り方などの動きがシャープで。
ご近所の騒音訴えおやじとのやり取りで、その家の女性が妹だと知り、魅力に気づいていくところなんか微笑ましくて。この映画のユンスクは、特に個人的に好きです笑。

ワンドゥクを演じるユ・アインも、改めて魅力的だ。鳥顔? つぶらな瞳のシンプルなつくりなんだけど、若々しくてなんとも生っぽいセクシーさがある。赤ちゃんぽくもみえる、というか、ほとんど息子感覚で見てしまった。
父を大事に思っていて、守らなければと常に気を張っているところ、実際に何かあれば助けにいくし、貧乏も留守番も健気に我慢している。そして、知らなかった母の存在を知り、会ってからの表情と心の変化がまた、ジーンとくるほど自然に感動的。バス停で母と抱き合うシーンなんか、ほんとに熱くなるし。こんな息子がいたら…ヤバイ、完全に嫁に嫉妬する母になるよ。

父役、叔父役、またご近所さんや教会の面々、同級生たちまで、みなそれぞれに温かく、悪人らしいひとが出てこないけれど、生活の厳しさなどは伝わってきて、単なるファンタジーではない。ハッピーエンドだけど、細やかな幸せ。それが空々しく感じない演出や演技で、ほんと楽しめた。ノワール以外でも、こういう小品にも韓国映画のしつこく強い魅力と実力を感じる。出会えてよかった〜。
うっちー

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