カテリーナ

アメリカン・ビューティーのカテリーナのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます


アメリカの美

観るたびに違う顔を見せるこの映画は
私にとって大切な一本となった
この映画の主題とは違うところで私の心を捉えた 多面的な素晴らしい映画である

アメリカの郊外の住宅地に住む家族の物語
壊れた家族の話である

この作品で主演男優賞を獲得した
『セブン』や『ユージュアル・サスペクツ』の名優 ケヴィン・スペイシー
彼はこの作品でも本当に素晴らしかった
中年の情けなさやリストラされた後の
開き直ってからのやさぐれ感
毒舌を吐きながらも思いやりを持つ
レスターを見事に演じて
どの作品よりこの役の彼が輝いていた

夫婦の愛の形は多様である
それをお互いが認め合って暮らして行ければいいんだとこの映画は教える

この映画の二組の夫婦はどちらも壊れている レスターとキャロラインの夫婦は
夫が妻に合わせていたことで夫は心を失ってしまった
もう一組はその逆

キャロラインは悪い妻ではない
庭に赤い薔薇を咲かせ食卓には
花器にいつもみずみずしい薔薇が活けられテーブルを華やかに飾る
栄養のバランスがとれた食事と落ち着いた音楽 それのどこがいけない?
それは独りよがりだからよ

自分を押し殺して毎日を死んだように生きるより 安定した日常を壊して人並みの
殻を破ったレスターは自分らしく生まれ変
わり イキイキと楽しそうだった
そんな彼は周りからも魅力的に見える
その変遷ぶりも圧巻

そうして人生の終わりは唐突にやって来る
初めて「あなたは幸せ?」と問いかけられ
心が暖かくなり、家族を思って微笑んだまま
その死に顔は笑っているようだった
銃声が闇を切り裂く
ジェーンとリッキーの耳に、アンジェラの耳に、
でもキャロラインの耳には届かなかった

エンディングを迎えた後の
キャロラインに二度目の悲しみが押し寄せる
そのことを想像して更に涙が止まらなくなった それは二度目の鑑賞の時だった

一度目の時はキャロラインを入れの耳にも銃声が聞こえていたと思っていた
その上でクローゼットで泣き崩れたのだと

でもそうじゃなかった
雨の音にかき消されていたのだ

ところでこの映画は編集の段階でミステリーの形式を変更したと聞いた
ミステリー仕立だったら
こんな名作にはならなかった
その功績を称えてアカデミー賞の脚本賞も獲得している
カテリーナ

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